脚本家・坂元裕二「夢かと思った」 映画『怪物』でカンヌ国際映画祭 脚本賞に輝く
映画『怪物』(6月2日全国公開)は、大きな湖のある郊外の町を舞台に描いた物語。学校で起きたケンカが大事になり子供たちがこつ然と姿を消します。いったい「怪物」とは何か、を描いたヒューマンドラマです。坂元さんはこれまで、ドラマ『Monther』『Woman』『カルテット』や、映画『花束みたいな恋をした』などを手がけてきました。
授賞式では是枝監督が壇上で、「ありがとうございます。一足早く日本に帰った坂元裕二さんに、すぐ報告します。僕がこの脚本の基になったプロットを頂いたのが2018年の12月なので、もう4年半前になります。そこに描かれた2人の少年たちの姿をどのように映像にするか、少年2人を受け入れない世界にいる大人の1人として、自分自身が少年の目に見返される、そういう存在でしかこの作品に関わる誠実なスタンスというのを見つけられませんでした。なので、頂いた脚本の1ページ目に、それだけは僕の言葉なんですけども、『世界は、生まれ変われるか』という1行を書きました。常に、自分にそのことを問いながら、この作品に関わりました。一緒に脚本を開発した(企画・プロデュースの)川村(元気)さん、山田(兼司)さん、作品に関わっていただいたスタッフ、キャストの皆さん、みんなの力でこの賞を頂けたと思っております。ありがとうございました」とスピーチしました。
■是枝監督が脚本家・坂元裕二との“メールのやりとり”明かす
また、現地メディアの中継で是枝監督は、受賞後すぐに脚本の坂元さんに報告したところ「夢かと思った」という返事がきたと明かしました。
さらにその後、日本メディア向けの取材に応じた是枝監督は「先ほど坂元さんからメールが来たというお話がありましたが、そのあと話をする機会はありましたか?」と聞かれると、「いや、メールだけなんですけどね。多分、起きてすぐ“怪物チームの一人としてうれしいです、感謝です”というのが来て、僕から“坂元さん、簡単なコメントいただけたらうれしいです。簡単じゃなくてもいいです”と送ったら、“えっ、今?”と。だから、“もう少ししたら囲み(取材)があるので”と、これを前提にお願いしたら、すぐにきて、“たった一人の孤独な人のために書きました。それが評価されて感無量です”と。そのあとまた寝たかもしれませんね(笑)」と、坂元さんとの具体的なやりとりを明かしました。
そして、坂元さんと「もう1度組んでやりたいことはある?」という質問に、是枝監督は「僕はありますね。坂元さんがどう思っているかは今度聞いてみます。ただ、とてもいいバランスで脚本と演出のタッグを組めたんじゃないかな。お互いのいいところを引き出せたっていうとちょっと自分でほめ過ぎな気もしますけど、相性は良かったと思います」と今回の制作を振り返りつつ、将来の展望について語りました。