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中国 農村部で相次ぐ“性暴力”――背景にある「共通項」 被害者も加害者も生まない社会を目指して

2024年5月4日 20:09
中国 農村部で相次ぐ“性暴力”――背景にある「共通項」 被害者も加害者も生まない社会を目指して

中国で、近年、相次いで発覚している性暴力事件、その多くが農村部で起きています。背景に何があるのか取材しました。

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中国南部・湖南省邵陽市。のどかな村で、中国社会を震撼させる事件が明らかになりました。

付近の住民「あんな人を野放しにするべきではない」

去年、未成年への強姦などの罪で、男に死刑が執行されました。中学校の教師で、当時12歳から14歳の女子生徒7人に、4年半にわたって性暴力を繰り返していたのです。被害者の中には、自ら命を絶とうとした生徒もいました。

なぜ4年半もの間、性暴力が見過ごされてしまったのか。住民に話を聞こうとしましたが…皆、一様に口を閉ざします。

――教師による性暴力事件について何か知っていますか?
付近の住民「聞いてない」
別の住民「教えられない」

取材を続けていると突然、私たちが乗った車の運転手に中国当局から電話がかかってきました。当局とみられる男性の声で「通報があった」との連絡が。運転手が「なんの通報ですか?」と尋ねると、男性は「北京から来た連中が今、取材をしているだろう」と言います。事件を掘り起こそうとする外国メディアを警戒し、圧力をかけてきたのです。

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今回の事件の被害者にはある“共通項”があります。

付近の住民「(被害者の)多くが『留守児童』。おとなしくて、親がいない子。親が家にいる子に性暴力はしないよ」

「留守児童」とは、都市部に出稼ぎにいった親と離れ、農村の親族に預けられている子どもです。留守児童の女子中学生は「事件のことを知っています。怖かった…」と話します。湖南省ではほかの村でも「留守児童」を狙った性被害が相次ぎ、親による抗議行動も起きています。

さらに、もう1つ指摘されている問題が…「性教育の遅れ」です。

――(体の)触られたらダメな場所、教えてもらった?
4歳女児「知らない」
祖母「『下半身はダメ』と教えたでしょ」

中国政府は3年前に、学校での性教育を義務づけました。しかし、農村地帯では“性暴力が何なのか”すら理解できない子供がほとんどです。

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“性”に無知だったがゆえ、幼い頃、加害者側に立ってしまった男性が、取材に応じてくれました。「留守児童」として祖父母に育てられた胡佳威さん。6歳のころ、友人が胡さんと近所の女の子に対し、服を脱ぐように命じました。その上で――

胡佳威さん「(裸にした)女の子の上に乗るように私に指示し、陰部を女の子の身体に押し当てた。6歳だったので、それが何を意味するのか分からなかった」

胡さんは中学生になって、“自分は性加害に加担していた”と気づきました。一方で、“自分も性教育の遅れが生んだ被害者なのではないか”…そう考えた胡さんは、「性教育」の普及に取り組む会社を立ち上げました。子供たちが、受け入れやすいようにとデザインした人形を使い、赤ちゃんの人形からは心音が聞こえるように工夫しました。

胡佳威さん「『どのように出産するか』を教えるときに、子宮から人形を引っ張るんだ」

これまで全国30万人の子どもに出張授業を行ってきました。性について正しい知識を持つことがいかに大切かを、子供たちに伝えている胡さん。「被害者」も「加害者」も生まない社会を目指しています。

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