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【解説】中東緊迫化 「報復の連鎖」か…戦闘拡大の可能性、ガザ情勢への影響は?

2024年4月16日 6:32
【解説】中東緊迫化 「報復の連鎖」か…戦闘拡大の可能性、ガザ情勢への影響は?

イランがイスラエル国内に向けて行った大規模な攻撃。これにイスラエル側が報復攻撃に出るのか、世界が注目しています。

今後について「イスラエルの反撃は?」「中東戦争へ拡大か」「アメリカは止められる?」といった3つのポイントで整理しながら、中東情勢が専門の慶応大学・田中浩一郎教授とお伝えします。

■イスラエルの反撃は…? ネタニヤフ首相「危害を加える者 誰であろうと反撃」

――まず「イスラエルの反撃」ですが、ネタニヤフ首相は「我々に危害を加える者には誰であろうと反撃する」と発言しています。一方で、イラン側は、「報復があれば次の作戦はさらに大規模なものになるだろう」と警告しています。今後、イスラエルによる反撃は、あるのでしょうか。

慶応大学・田中浩一郎教授
「私はあると思っています。イスラエルは攻撃を受けたりしたら、それに対して10倍、100倍返しをすることで、相手に今後とも、それ以上攻撃させないようにするというある種、非常に強い力と意思を見せることを旨としてきています」

「今回、さほどの被害を受けなかったとはいえ、イランがこういう攻撃能力を持っているということを誇示したわけでもありますので、イスラエルが行動を起こすことは、私は必然、ないしは必至だとみています」

――イランの軍事力から考えて…イスラエルは、イランに対して10倍100倍の報復攻撃をする能力は持っているのでしょうか?

田中浩一郎教授
「そこまではさすがに遠方でもありますので、一度にはできないと思います。単独でもそれは難しいことだと思います。ただ一旦、イランとイスラエルとの間で交戦状態となればですね、それは“アメリカを動かすことができる”というふうに、イスラエルのネタニヤフ首相は計算していると思います」

――もう一つだけ。イスラエルが反撃するのではないかと、田中さんがそう考えるのはどういう理由からなのでしょうか。

田中浩一郎教授
「やはり敵にこのような攻撃を受けたということを、そのまま放置しておくということは、特に国家本土を攻撃された側としては、やはり放置できないわけです。戦争というのはそういうもので始まるわけですが…もちろんイランも国土に等しい大使館を破壊されたと、そして多くの軍人を失ったということから報復、反撃をしたわけですが、それと同じ論理なんですね」

■中東戦争へ拡大する可能性は…

――今の話を踏まえ、ポイント2つ目なのですが、今後、報復合戦になり「中東戦争へ拡大」する可能性はあるのでしょうか。

田中浩一郎教授
「もちろん、それが第5次中東戦争なのではないか…という声もあるのですが、当座のところ、イラン側に加勢する国はおそらくない。それから非国家主体とされている武装組織などは動くとしても、国としてイランに加勢する国はおそらくないとみられます」

「また、イスラエルの側に積極的に加勢する国も…域外国であるアメリカ、イギリス、フランスなどが仮に出てきたとしても、域内にはおそらくないので、もっぱら撃ち合うのはイランとイスラエル、そこにアメリカなどが割って入るというような格好ではないかと…。これは本当にエスカレートした場合(の話)です」

■アメリカは止められる? バイデン大統領「報復に反対 反撃に参加せず」

――そのエスカレートする前に…3つ目のポイントである「アメリカはイスラエルを止めることができるのか」、この点についてはどうでしょうか。

田中浩一郎教授
「バイデン大統領が『これで終わりにしておけ』というような感じで(イスラエルに)言ってはいるようですが、10月7日以降のガザに対する攻撃などを見ても、ネタニヤフ首相はほとんどバイデン大統領の言うことを聞いていません」

「今回のケースはまさにイスラエルが被害をまた受けた、ということでもありますので、これで“行動を起こさないリーダー”と見られることも、やはり政治家としてはできないと(思います)」

■ガザ情勢への影響は…?

――一方で、イスラエルが侵攻を続けているガザ情勢への影響はどう考えますか?

田中浩一郎教授
「イスラエルが仮に、ガザの情勢をとにかく自らの手で終えたい…特に彼らが思うように“イスラム組織ハマスをせん滅するんだ”というようなことを追求するのであれば、イランとの戦いに深入りすることはおそらくできないと思います」

「ただ一方で、アメリカが言うようにイランへの報復を思いとどまるということになれば、逆に今度は“アメリカ側の言うことを聞いたんだからガザの件に関しては黙っていろ”ということで、より強烈なガザ攻撃、特に南部ラファへの地上侵攻などに乗り出す危険性はあるとみています」

■日本への影響… エネルギー価格が上昇?

――今後、エネルギー価格の上昇など日本への影響も出てくるのでしょうか。

田中浩一郎教授
「紛争が拡大した場合、一番の問題は、エネルギー価格もそうですが、ホルムズ海峡という、いわゆるチョークポイントがどのようになってしまうのか…。そうなると石油、ガス、その他諸々の物資の輸送に大きな障害が発生します」

「それは世界的にも大きな問題になるのですが、日本を含む東アジアというのは、この地域にエネルギー資源をかなり依存している国が多いわけですから、みんな大変なことになると予想はしています。特に価格は一時的にせよ、急騰するというような事態を迎えることも大いにあり得ます」

■収束があるとすれば…どのような形に

――今後、イランとイスラエル、そしてガザ地区の紛争について、収束があるとすればどんな形でしょうか。

田中浩一郎教授
「今回のケースでイスラエルが、とりあえずこれ以上(イランに)反撃をしない、報復をしないということで、少なくともおとなしくしていれば…おとなしくしてくれていれば、それであれば、ここの一連の連鎖、暴力の応酬は一旦、ここで止まります。だからといって、これでイスラエルとイランとの間で、今後、一切戦火を交えないということを保証するわけでもないと」

――ガザについてはどうでしょうか。

田中浩一郎教授
「ガザは、あまりいい見通しがどのみちありません。残念ですけれど、イスラエルが攻撃をしなかったとしても、現状の悲惨な状況を改善するような術もまた取られないままということですので、この現状は決していい状態ではないということです」

(4月15日放送『news zero』より)

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