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南三陸へ…移り住んで高校生活! 全国から生徒募集…志願者は前年の2倍 町長が身元引受人【東日本大震災13年の“あれから”】

2024年3月6日 6:52
南三陸へ…移り住んで高校生活! 全国から生徒募集…志願者は前年の2倍 町長が身元引受人【東日本大震災13年の“あれから”】
東日本大震災で大きな被害があった宮城県南三陸町。これまで地域に根差してきた高校が新たに「南三陸高校」として船出した。高校名のほかに、新たに始めた取り組みが「全国からの生徒募集」だ。震災後、移住者が増えるなど、多様な人材が集まる南三陸町で育む創造力。そして、多様な人材が交じり合うことで生まれる価値観を養うことを目指している。

1年前、初年度の年に入学した生徒は全国各地から集まった5人。震災後、復興事業を担う作業員が使っていた宿泊施設を改装した寮に住み込み、地域と交わりながら生活を送っている。新2年生となる4月以降、本格的に町の歴史や魅力を学び、震災伝承の活動にも携わっていくという。

2024年4月からの新年度、入学を志願する生徒は1期生の2倍となる10人。町は将来的に地域を盛り上げていく人材に、と期待している。

■初の全国募集 親元を離れて南三陸に

2023年春、志津川高校から校名が変わった南三陸高校。新入生55人の中には、初の全国募集で集まった生徒5人の姿もありました。彼らには、親元を離れて南三陸を選んだ理由がありました。

神奈川出身の小畑孝太朗さん
「親元からの自立だったり、高校進学の新しい選択肢としてやっていけたら」

山形出身の伊藤芽衣さん
「修学旅行で初めて南三陸町に来た時に、地域の方々の元気の良さと人柄の温かさにひかれて南三陸高校を志望しました」

南三陸高校・難波智昭校長
「風の匂い、海の冷たさ、バーチャルでは体験できないものを体感して知識・経験として持ち帰って欲しい」

■復興に携わる作業員の宿泊施設

生徒たちを受け入れるのが学校から約1キロ離れた学生寮「旭桜寮」です。

「子どもさんたちの食堂になります。雑談室というか」

この建物、元々は震災復興に携わる作業員向けの宿泊施設でした。それを移築したもので、1階には洗面所、洗濯室などもあります。2階には、生徒たちが生活する部屋が24室並んでいました。

居室内は、浴室とトイレに冷蔵庫。レンジやベッドのほか、窓もあってビジネスホテルのような雰囲気でした。インターネット環境も整備されていて、寮の費用は施設費・光熱費・食費込みで月額5万5000円だといいます。

■地域全体で生徒たちを見守り

寮母を務めるのが熊谷小松さんでした。取材したこの日は生徒5人を受け入れる3日前のことで、料理に使う調味料の買い出しに来ていました。

寮母・熊谷小松さん
「自分も使っていてすごく美味しいし、子どもたちにも、せっかくここに来たんだから、南三陸町のに慣れ親しんでほしい」

近所の味噌・醤油屋さんで買い込んだのは、5キロの白みそと醤油の濃い口と薄口、それに甘みそ。県外からの生徒を受け入れることに関して地域の人はどう思っているのか。

高長醸造・高橋長泰さん
「ここは特にいろいろな地域から集まって団地を形成して。でも、大丈夫」

地域全体で生徒たちを見守っていきます。

寮母・熊谷小松さん
「いっぱい食べて、元気に」
「分からない土地に来て聞きたいこともあるだろうし、悩むこともあるだろうし、そういう時に気軽に話しかけてもらえるような雰囲気はいつも作っておくべき。心がけていきたい」

■“第二の故郷”と思ってもらえるように

公立高校での生徒の全国募集は、都道府県別では東京や大阪、愛知などを除く41道府県が始めています。2023年度、東北では秋田では全ての学校で、岩手では14校、山形が6校、福島が4校。青森(4校)は宮城(2校)と同じく2023年度からスタートしました。

その一番の理由は少子化。旧・志津川高校でも2021年度の生徒数は173人と、2011年度の392人から半分以下まで減少しています。県の教育委員会に生徒の全国募集を提案したのは、南三陸町の佐藤仁町長だったといいます。

佐藤仁町長
「このまま推移していくと、学校の統廃合に繋がっていくという危機感を持っていた」
「ここ南三陸が“第二の故郷”だと思ってもらえるようにサポートしなければならない」

入寮式にも出席した佐藤町長は、生徒たちの身元引受人も務めます。

■「地元の人と積極的に関わりたい」

神奈川出身・小畑さんの両親も南三陸での3年間に期待を寄せます。

小畑孝太朗さんの母
「『地元(神奈川)の高校に行って、たくさんの人数の中で一人埋もれるのではなく、自分のやりたいことを見つけて、一人一人が輝けるような高校を自分は見つけた。それが南三陸高校だった』ということに心打たれて、応援しようと思った」

小畑孝太朗さんの父
「この町を好きになってもらわなければここに来た意味がない。その上で“学校生活”、“勉強”がメインなので、頑張ってもらう。寮に入ったから“自立してやっていく”」
「この3つはノルマとしてやってほしい」

小畑孝太朗さん
「地元の人と積極的に関わっていって、この南三陸町をもっといろいろな人に知ってもらいたいということと、この町のために少しでも努力しようと」

伊藤芽衣さん(山形出身)
「南三陸の中でボランティアを探したり、長期休みにアルバイトをしたりしてコミュニケーションの機会を増やしていきたい」

やって来た生徒たち。そして、南三陸町で生まれ育った生徒たちが新たな町の未来を作ります。

(※2023年4月13日にミヤギテレビの「ミヤギnews every.」で放送されたものを再編集しました)

【取材したミヤギテレビ・安斎摩紀キャスター 2024年3月に思うこと】

“震災で大きな被害のあった場所に移り住み、高校生活を送ろうとしているのはどんな生徒たちなんだろう”

取材を始めたきっかけです。中学生の子どもを持つ親として関心があったことも加わりました。「子どもを送り出す親の想いは?」「生活環境は整っている?」

次々に湧いてくる疑問とともに南三陸へ向かうと、そこで目にしたのは整えられた寮、子どもたちのケアをしてくれる寮母さん。お話を伺い安心したのを覚えています。県立高校でありながら、町全体でサポートしている様子。そしてなにより、入学式に出会った子どもたちの希望に満ちたキラキラした目が忘れられません。

全国各地から集った子どもたちは、それぞれ震災からの復興を遂げる町自体に興味があったり、この町でなら自分のペースでやりたい事を見つけられるはずという思いを抱いていたり、とにかく希望にあふれています。そして、そんな子どもたちの思いに寄り添い、そっと背中を押してくれているご家族の存在も支えとなっていました。

この春からは2年生。地域の人たちと共に更なる豊かな心の成長ができますように!

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