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特集「キャッチ」日産自動車九州の野球部が15年ぶりに復活 野球の火は消さない 歴史をつなぐ指揮官の思い 福岡

2024年4月4日 13:50
特集「キャッチ」日産自動車九州の野球部が15年ぶりに復活 野球の火は消さない 歴史をつなぐ指揮官の思い 福岡
日産自動車九州の野球部が15年ぶりに復活
特集「キャッチ」です。福岡県苅田町の日産自動車九州の野球部が15年ぶりに復活しました。その裏には、チームの歴史を途絶えさせてはいけないと地道な取り組みを続けてきた指揮官の強い思いがありました。

夢中になって白球を追いかける若者たち。ユニホームには「日産」の文字が刻まれています。

福岡県苅田町で活動する日産自動車九州 野球部です。

■日産自動車九州 野球部・植山文彦監督(55)
「ここからこの範囲で粘って(バットを)出し切らんと。」

そのチームのかじ取りをするのが監督の植山文彦さん(55)です。

■日産自動車九州 野球部・植山文彦監督(55)
(Q.一番うれしいのは植山監督では?)「当然です。こうやってもう一回野球ができる。本気で野球ができるのはうれしい。」

植山監督にとって“日産”の名前を背負って野球ができるのは、決して当たり前のことではありません。

1986年の創部以来、全国大会15回の出場を誇る日産九州野球部。植山監督は選手として15年プレーし、キャプテンも経験しました。

しかし、リーマンショックにより多くの企業が業績不振に陥り、日産もそのあおりを受けて2009年に野球部の活動を休止したのです。

植山監督ら野球部OBは活動休止の翌年に、日産九州で働く選手を中心としたクラブチームを発足させます。

■植山監督
「“野球の灯”を消してしまうと何もなくなるので、チームを存続させようと。」

14年間チームを指揮しながら、再び企業チームとして復活できる日を待ち望んでいました。

その吉報が届いたのは突然のことでした。去年9月、日産が日産九州野球部を15年ぶりに復活させることを発表したのです。

業績が回復したことなどが理由で、植山さんが監督を務めるクラブチームを中心に選手が編成されることになりました。

■植山監督
「(企業チームの活動再開について)正直もう無理かなということもありましたが、自分がやってきたことが正しかったというか、評価されたというか、そういう思いで14年間の苦しかった思いが込み上げてきた。」

「本当に申し訳ない」6人に退部を告げた

活動を再開する前に植山監督には大きな仕事が待っていました。

去年10月、クラブチームの選手を面談のために呼び出しました。

■植山監督
「キレとかスピードとかいうところを見て、企業チームじゃ厳しいんじゃないかと判断させてもらったので、大変申し訳ないんやけど、ここでユニホームを脱いでもらう。」

野球の時間も給料が支払われる企業チーム。実力がなければチームに残れない厳しい世界です。

■選手
「力になれず、すみませんでした。」

■植山監督
「いや、とんでもない。俺が力になれず申し訳ない。もうちょっと投げさせてやりたかったけど、最後あまり投げさせられなくて申し訳ない。」
■選手
「ありがとうございました。」

■植山監督
「大好きな野球をやらせてあげられない。厳しい世界といえば厳しい世界なんですけど、本人の受け止めはどうか分からないけど、本当に申し訳ないという気持ちしかない。」

6人に退部を告げました。

ことし2月に開かれた野球部復活を祝う壮行会で、日産の社員およそ600人が激励しました。

■日産自動車九州・冨山隆社長(当時)
「(野球には)応援する人の士気を高め、一体感を醸成する力がある。 野球部には企業文化変革の象徴として活躍することを期待している。」

新しいユニホームも披露され、クラブチーム時代からの選手に新たな仲間も加わり、あわせて30人の選手でスタートしました。

キャプテンを任されたのは、クラブチームに4年所属した合田有希選手(26)です。

■日産自動車九州 野球部・合田有希主将(26)
「(車の)フロントバンパーの外観検査と穴加工をやっている。」

合田選手は日産九州ではなく、その協力会社で働いています。日産九州の野球部は、協力会社で働く人もプレーできるのが特徴です。

■合田選手の上司
「今週、野球の大会あるやろ?見に行くけん頑張って。」

企業チームになったことで社内の期待感も高まっています。

■合田選手の上司
「(仕事と野球を)両立して頑張ってもらいたいのが一番なので、会社としては彼らを応援している。」

強豪の誇りを胸に高みを目指して

変わったのは周囲の反応だけではありません。

クラブチームのときは、週に1度の全体練習と仕事終わりの自主練習だけでした。しかし今では、平日は午前中で仕事を終え、全員で練習ができるなど野球に集中できる環境を手に入れました。

■合田主将
「毎日ノックもできるし、バッティングも外でできるので、毎日充実している。」

さらに、バットやボールなどの道具や遠征費も会社から支給されます。

■植山監督
「野球でお金を稼いでいることを(選手たちが)自覚して、今度はグラウンドで、プレーで恩返ししないといけない。」

■合田主将
「日産自動車九州になって一発目の大会なんで、勝って幸先いいスタートが切れるように。さあ、いこう。」

この日は新生・野球部として、最初の公式戦を迎えました。相手は全国大会出場経験のある強豪です。

ショートで出場した合田選手は、持ち前の守備力でチームを引っ張ります。

■植山監督
「盛り上げていこう、元気出して、元気出して。」

■植山監督
「入れ!」

試合は延長戦にもつれ込む接戦です。

合田選手も奮闘しましたが一歩及ばず、初めての公式戦は惜しくも敗れました。

■合田主将
「勝ちたかったんですけど、やっとスタートが切れたので。全国にまた日産のユニホームが復活するために、頑張っていきたいなと思っています。」

■植山監督
「会社、地域から野球部復活してよかったなと言ってもらえるように我々は頑張るしかない。」

強豪復活を信じて歴史をつないできた植山監督。次に目指すのはクラブチームでは届かなかった全国の舞台です。

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