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行方不明、軟禁、資格取消…中国の人権取材

2021年12月29日 17:01

中国の人権状況への注目が高まっている。オリンピック開催を控える中、告発した著名な女子テニス選手が一時安否不明とされたほか、新疆ウイグル自治区での人権侵害の指摘も根強い。取材で見えたのは、「声を上げる人」への圧力の実態だった。

■「世界人権デー」に“軟禁”と“失踪”

2021年12月10日、国連が定める「世界人権デー」の日。人権派弁護士である王全璋さんの北京の自宅前には、黒ずくめの男女が詰めかけていた。王さんと妻が自宅から出ようとすると目の前に立ちはだかり、正体も明かさない。王さんらはその様子を撮影しSNSに投稿した。

私たちが情報を覚知し、現場へ向かうとアパート2階に住む王さんの部屋へと続く階段には、複数の男らの姿があった。後から映像を見返すと、10人ほどいたことが確認できた。彼らは警察関係者とみられている。

なぜ警察が王さんを軟禁するのか?王さんは彼らから「中国の人権が注目されているから、君たちを見張る必要がある」と伝えられたという。実はこの日、王さんや妻は「世界人権デー」に合わせたEU代表部の関連イベントに出席するはずだったのだ。

王さんは人々の権利を守る活動が当局ににらまれ、国家政権転覆罪で2020年まで4年以上服役していた。しかし、王さんが国家転覆を企てたとする具体的な内容などは明かされず、当局による人権弾圧の被害者として王さんは国際的に注目されることになった。警察はその王さんが人権問題について発信することなどを警戒し、イベントへの出席を防いだとみられる。

当日、人権活動家の唐吉田さんもEU代表部へと向かったとみられるが、大使館が集まるエリアについて「この場所は安全ではない」とSNSで発信したあと、連絡が取れなくなっている。拘束されたのか、あるいは軟禁状態にあるのか安否が心配されている。(注:12月24日時点で2週間連絡がとれない状況)

■人権派への圧力は「影響力の低下」狙いか

世界人権デーから5日後の、2021年12月15日。今度は著名な人権派弁護士の梁小軍さんが、弁護士資格の取消処分を受けた。SNSでの発信が「国家の安全を脅かした」ためとしている。この前日には聴聞会も行われたため、私たちが司法当局へ取材に行くと、支援者が数人集まっていた。さらにそれ以上の人数の私服警察官が、遠巻きに、騒ぎを起こさないか警戒していた。

梁さんは私たちの取材に対して、「法律に触れることはしていない」とする一方で、「中国では、多くのことが法律通り動くわけではない」とも話した。人権派弁護士が弾圧される状況については「多くの市民の声を代弁しているから、その影響力を出来るだけ削ぎたいのだろう」と話した。

梁さんは自ら経営する弁護士事務所で、複数の人権派弁護士を雇用して中国の「法治」を求めて活動してきた。資格を取り消されることを尋ねると「時代の流れだ」と無力感をにじませた。

中国では、2015年に人権派弁護士や活動家300人以上が一斉に拘束された事件が発生。筆者も弁護士の資格取消処分を受けた人々を何人も取材してきたが、梁さんのように“声を上げる人”への弾圧は強まっている。

■中国「人権で完璧な国ではない」と認めるも…

もちろん習近平国家主席が「軟禁」や「拘束」「資格取消」ひとつひとつを指示しているとは思わない。ただ、“異論を許さない”という習近平政権の大方針のもと、激しい手法で弾圧が行われていることに、欧米諸国や人権団体は懸念を表明しているのだが、習近平政権にその声は届かない。

中国の孔鉉佑駐日大使は、2021年12月16日、講演の中で、自国の人権状況について「もし本当に客観的事実に基づいての建設的な批判であるならば、我々としては謙虚に受け止めていく。なぜなら、人権そのものについては、中国は完璧な国ではありません」と話した。大使レベルの人物が“足らざる部分”を公然と口にするのは異例にも思える。

ただ、直後には「日本もアメリカも完璧ではありません」「この問題においてアメリカを代表する一部の国が中国の“先生”だというような振る舞いは、我々としては認めません」と強調した。孔大使に言わせれば、人権問題を指摘する声とは、すなわち人権を「政治の道具」として利用しているということなのだろう。“中国は聞く耳を持つ必要がない”と宣言しているのに等しい。

■発信させないために弾圧を強める中国

前述の人権派弁護士の王さんは、「北京が政治的なイベントなどで注目されるときには、毎回こうした軟禁状態となる」と語った。北京冬季オリンピックまで1ヶ月あまり。国の威信をかけたイベントを控え「声を上げる人」への締め付けが強まる懸念はぬぐえない。中国政府は、人権を尊重していると反論しているが繰り返される軟禁や拘束は、その主張との“矛盾”を浮き彫りにしている。