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新型コロナと日本経済 苦しんだ業界の今

2021年12月30日 12:00
新型コロナと日本経済 苦しんだ業界の今

2020年に引き続き、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた21年の日本経済。各種統計からその現況を概観する。特に大きな影響を受けた業界の1つ、宿泊・旅行業は今…。そして22年の経済はどうなっていくのか、専門家に話を聞いた。

■2021年の日本経済は

2020年に引き続いて、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた21年の日本経済。感染の第3波、第4波、第5波が起こり、特に第5波では変異株であるデルタ株が猛威を振るい、ピーク時には全国で1日に2万5000人を超える新規感染者が確認された。

首都・東京を見れば、元日から9月末までのほとんどの期間で「緊急事態宣言」か「まん延防止等重点措置」が発出中という、まさに異常事態の様相を呈していた。しかし、ワクチン接種の進展とともに感染者数は落ち着き、10月1日からは全国で「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」がすべて解除。日本経済に回復の光が差し始めた。

21年の経済はどのように動いたのか。内閣府が発表している物価の変動を除いた、「実質GDP(=国内総生産)」を見てみると、1月から3月がマイナス、4月から6月はプラス、7月から9月はマイナスと、プラス成長とマイナス成長を繰り返している。

今後、発表される10月から12月の実質GDPは、12月13日に発表された日本の企業動向を把握する「日銀短観(=企業短期経済観測調査)」で、飲食・宿泊サービスやレジャー関連の業種などで大きな改善がみられたように、緊急事態宣言の解除などが影響しプラス成長となることが見込まれる。ただそれでも、1年間の景気をならしてみると、ほぼ横ばいだった年となりそうだ。

■大きな影響を受けた宿泊・旅行業の回復はいま?

新型コロナウイルスの影響を大きく受けた業種の1つが宿泊業だ。財務省の法人企業統計によると、宿泊業の経常利益は、コロナ前の19年度上半期は約1520億円の黒字だったのが、21年度同期は約2960億円の赤字となっている。緊急事態宣言が全面解除された10月以降はどのように推移しているのだろうか。

観光庁が発表している最新の「宿泊旅行統計調査」によると、10月の客室稼働率は全体で42.1%だった。9月は31.2%だったので10ポイント以上増加した。ただ、観光庁の担当者は10月の動向について「緊急事態宣言の解除や感染状況の落ち着きにより、9月に比べて増加しているが、19年比では依然厳しい状況」と述べている。

ホテル大手のプリンスホテルによると、緊急事態宣言解除後、シティー・リゾート両エリアのホテルで共に回復傾向で、特にリゾートエリアでの回復傾向が顕著だという。軽井沢エリアでは11月の稼働率で、コロナ前の19年と比較して約8割の回復率、箱根エリアでも約7割の回復率となっている。広報担当者は「新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き、観光需要のさらなる回復に期待をしています」と語った。

旅行業でも明るい兆しが。JTBが21年12月9日に発表した「年末年始(12月23日~1月3日)に1泊以上の旅行に出かける人」の旅行動向見通しでは、国内旅行者数が1800万人と前年比8割増になっている。また消費額も7割増の5760億円となる見込みだ。

JTBの広報担当者はこうした状況について、「県民割のような地域独自の仕組みなどを活用して、エリアツーリズムが主流となって旅行に行きやすい雰囲気になっている」と分析した上で、「新たな変異株の動きに注視しながら、さらなる今後の回復に期待している」と話している。

JR各社も、年末年始の指定席の予約席数は232万席で、前年と比べると8割増となっていることを発表。東海道新幹線など、一部の新幹線では前年と比べて2倍以上の予約席数となり、コロナの影響はまだあるものの、回復基調となっている。

■2022年どうなる? 専門家は

22年の日本経済は果たしてどうなるのか。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎氏は、「第6波を防止できて新年を迎えることができれば、もう一段景気は回復していく。需要はそこで持ち直してくる」と話す。

「年明け期待されることに『リベンジ消費』がある。これまで旅行に行けなかった、外食に行けなかった人たちがお金を使い始め、21年10-12月期にも出ている動きではあるが、年明けさらにステージが上がってくる」

「また『政府の経済対策』も期待される。具体的には、GoToキャンペーンなどだ。早ければ1月中旬から2月にかけて再開と言われ、そのあたりで再開されると春休みあたりの需要がぐんと盛り上がる。さらに子育て世代への10万円給付が、それなりに消費に回る可能性がある。こうした条件などがそろえば、それなりにしっかりした景気回復の足取りが期待できる」

「ただ、ペースは緩やか。理由としては感染拡大への警戒感が残ること。年末年始もそうだが、感染の第6波やオミクロン株に対する警戒感がある。リベンジ消費といっても勢いには限界がある」(小林氏)

■変異株でどうなる…

小林氏も指摘するように、来年の景気を占う上で目が離せないオミクロン株などの動向。政府分科会の専門家も、大前提として「第6波は起こると思う」と指摘する。いかにして感染対策と経済活動を両立しながら「成長と分配の好循環」を達成していくのか。2022年は年明けから政府の対応が問われる1年になる。