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次世代兵器「レールガン」の課題とは?

2022年1月20日 19:30
次世代兵器「レールガン」の課題とは?

砲弾を発射する際、火薬ではなく、電気エネルギーから発生する磁場を利用する次世代兵器「レールガン」。射程が長く、小型かつ低コストで連射が可能だといいます。しかし開発への課題は。そして変則軌道を描く最新鋭のミサイル迎撃に有効なのでしょうか。

■レールガンの課題は?

右松健太キャスター
「このレールガン、課題も考えておかなければなりません」

笹崎里菜アナ
「(レールガンの)実用化に成功した国はありません。また発射には大きな電力が必要で、電力源をどう確保するのか、さらに直進しかできず、変則的に動くミサイルを迎撃できるのか、そして巨額の研究開発費がかかることなどが課題として挙げられています」

右松キャスター
「課題はやはりこの電源?」

小原凡司 笹川平和財団上席研究員
「はい、実用化するための一番大きな問題はこの電源システムだと思います」

「電源を常時発生することができないと蓄電しないといけない。蓄電した電力を放出すると、やはり今度充電するまでにまた時間がかかる」

「これは連射にならないですね。こういったことは徐々に改善はされていますけれど、日本が一番この部分で比較優位を持っているということなのだと思います。ですから、アメリカと今後協力する上においてもこの電源システムの技術の優位性というのは、日本はもっと生かすべきだと思います」

■変則軌道を描くミサイルを迎撃できる?

右松キャスター
「北朝鮮のミサイルが変則軌道を描いていると。そもそもいろんな方向転換するものをまっすぐ進むもので迎撃できるものなのか?」
小野寺五典元防衛相
「まず、これ一つでミサイル防衛システムが確実だ、ということにはならないと思います。当然、今行っているイージスシステムがありますし、それからPAC3もあります」

「そういうものの複合の中で、このレールガンという技術も当然あっていいと思います」

「今後の課題というのは、飛んでくる目標にどう自動的に照準を合わせて、それに向かって撃って当てるか。あるいは、もしかしたら当てなくても近くに行って何かの炸裂をする中で、来るミサイルを食い止めるとか。とにかくまだ研究始まったばかりですから、今後どういう発展系でうまく使えるかということは、まだ可能性があると思います」

小原氏「(極超音速兵器は)速度が上がれば上がるほど大きな運動はできないんですね。特に高度が低くなってきて大気の密度が濃くなれば濃くなるほど速度も上がらなくなりますし大きな運動はできなくなる。ですから極超音速兵器といっても、軌道を変えるのは非常に高い高度で、空気の薄いところで変えるのが主流で、最後はやはり(まっすぐ)落ちてくるんですね」

「(レールガンは)連射ができるということですから、逃げ回る飛行機を撃つのとは全く違って、そこまでの大きな軌道はできないものを打つということでは非常に有効だと思います」

■「レールガンは」今後の主流の兵器になる?

右松キャスター
「松野官房長官は『レールガンの研究開発に本格的に着手する。早期実用化に向けて着実に取り組んでいきたい』と発言をしている。今後主力の一つに?」

小野寺氏
「まだそこまで実戦に使えるかどうかというのは未知数です。ただ少なくても今回の試作品を見る限り一定の可能性はあるなと。しかも課題の部分というのは実は世界の中で日本が得意とする部分です」

「日本として今急いでやれば、もしかしたら日本の方がいいものができるかもしれない、そういう意味では日本にとってはこの技術は重要かなと」

飯塚恵子 読売新聞編集委員
「夢のような話として1960年代からあった構想があったと聞いています。今動き出したことに、実現すればすごいな、というのと本当に実現するのかしら、という半信半疑の思いが両方混ざります」

「私が最初に防衛省幹部からレールガンに対する真剣な思いを聞いたのは、2016年でした。米国の技術開発に日本で主体的に参画したい、という思いを語っていた」

「レールガンは極超音速ミサイルに対する防空手段だけでなく、その先には、艦艇や地上の目標に対し、逃げられないような打撃力を遠距離から与えるという打撃力として使う構想もあると。今は防空の話ですが、そのうち打撃力としても使えるのではないかという構想もあると」

「日米共同でこれを開発できれば、相当な同盟強化の材料となるんだと思いますね。今の防衛省の構想では、2022年度から5年間、研究試作を行って、24年からは並行してテストを5年間行い、そのあと配備を目指す。約50年間、技術的な難しさや予算の大きさなどから開発が進まなかったものが、この短期間でうまくいけば2028年にテストが終わるという話で、どうなっていくのか注目したいですね」

■ミサイルの脅威が迫っている中で、スピード感は?

小原氏
「2028年までに開発できるということは非常に速い速度で開発が進むということなんだと思います」

「今すぐにこれを装備する必要がないと私が思うのは、今実際に、中国にしろ、アメリカにしろ、そして日本もそうでなければいけないんですけれど、政治的なメッセージを送りあっているんですね。今すぐ誰かが戦争したいと思っているわけではないと。ですから『日本はこういった能力を持ちます』『ここまでに配備します』それを具体的に計画として見せるということが、日本の拒否的抑止能力を格段に高めることになる」

「例えば最近中国は、日中関係を米中関係の従属変数のように捉える傾向はありますけれど、日本はいかに主体性を維持できるか、持っていけるかということは非常に重要な問題だと思っていまして、そうすると日米が協力する。オースティン国防長官が『integrated deterrence』(統合抑止)という言い方をされていますけど、その統合される部分の中にあるとしても、日本は日本としての独自性、主体性を持たなければいけない。そのためには日本がしっかりとした技術を持って共同開発をする際にも一方的に頼るわけではないと。お互いに対等にちゃんと技術を持ちあって協力ができるんだということにしておくことは非常に重要だと思っています」

小野寺氏
「日本が革新的な技術をさらに高めて、そしてゲームチェンジャーの技術を持つということになれば、当然今まで日本を攻撃しようと思っている国、当然そういうふうに想定してなくても、私どもとしてそう感じる国の装備は、これである面ではある程度、無力化できるとすれば相手は攻撃してこられないわけです。これがやはり抑止力ということになりますので、私はやっぱり『しっかり防げるということ』、『こちらが持っているということ』、それがむしろ戦争を起こさない、とても大きなメッセージになりますので、ぜひ早くこういう装備、これだけじゃなくて、日本の技術を生かした新しいゲームチェンジャー技術をどんどん進めていきたいと思います」

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