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「ここまで」と決めて自分の集大成を見せて終わるのが美しい形――元宝塚男役スター・愛月ひかるが紡ぐタカラジェンヌの“品格”

2022年2月17日 7:00
「ここまで」と決めて自分の集大成を見せて終わるのが美しい形――元宝塚男役スター・愛月ひかるが紡ぐタカラジェンヌの“品格”
元星組男役スターの愛月ひかるさん

2021年12月に宝塚歌劇団を退団した元星組男役スターの愛月ひかるさん。正統派二枚目から個性の強い役まで幅広い役を演じた。退団後、テレビ初出演で語った宝塚への愛、第2の人生の“夢”とは――。熱烈な宝塚ファンである日本テレビアナウンサーの安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が迫った。(前・中・後編の中編)

■大切にしてきた「品格」

(安藤アナ):愛月さんにとっての『品格』というのはどういうものですか。

「私が宝塚に入って一番大切にしてきたことなんです。私は宝塚の枠からはみ出たようなお役が多かった中で、どこか品格を忘れないことで宝塚からもはみ出ないことができたと思います。それは(品格を)大切にしていたからできたことだなと思いますし、自分にとって一番やっぱり大事にしていたものですね」

(中島アナ):品格の原点はどこから?

「タカラジェンヌとして一番持っていなきゃいけないものかなって思うんですよね。宝塚の方が持っているオーラって独特じゃないですか。それって品格なんじゃないかなってすごく思います。みんな内側にこれ(品格)があるんじゃないかな」

「(品格を保つために)『自転車に乗らない』。と言っても私は自転車が下手なだけなんですけど。苦手でセンスがないので基本的には乗らないようにしようと思っていたんです。退団して自転車は乗ってみようかなと最近購入したんですけどまだ1回も乗っていないんです」

(安藤アナ):よく組まれていた92期のすみれ乃麗さんに「愛月ひかるさんはどういう人ですか」と聞きました。「『宝塚の塊』と言い表したいほど宝塚ファンの理想を細部まで具現化してくれるタカラジェンヌでした。ズバっとモノを言うので下級生からは厳しいと思われていたかもしれませんが、本当は心の奥底が優しい名前の通り、愛にあふれる温かい人。相手役に対しても優しく誠実で、相手役を務めた娘役はみんなまた愛月さんと組みたいと熱望する男役さんでした」と。

「そんな良いことを言っていただいてありがとうございます。よく組ませていただいて、こちらからは『娘役の塊』という言葉でお返ししたいほど。下級生が相手役なのに自然に立ててくださる。組んでいるときに麗さんの存在に助けていただいたこと何度もありますし感謝の気持ちしかないです」

■自分の「男役」を継承したい

(安藤アナ):「ファンの理想を具現化」というのは意識されていましたか。

「宝塚の根底にあるのは漫画に出てくるような『白馬の王子様』ができる男役。それが必要だと思いますし、オールドファンの方にも喜んでいただけるような男役を最後まで私は追求したいと思ってやっていました」

(安藤アナ):すみれ乃麗さんに『舞台上での気遣い、具体的な思い出がありますか』と聞きました。「本公演の『風と共に去りぬ』でチャーリー役とファニー役で組んでいたとき、公演中お芝居をしている途中で私の衣装の背中のホックとスナップがほぼ全開してしまったことがあり、すぐさま気づいて客席からはわからないようにお芝居をしながら閉めてくれた。愛ちゃん自身も役としてお芝居をしていたのにもかわらず、気づいてくれた視野の広さ。すぐ対応できるとっさの機転。愛ちゃんの心の奥底の優しさだと思います。最後にあの時本当にごめんなさい」と。

「ありましたね。バザー会場の場面だと思います。気遣いは本当に大切。舞台人は周りが見えてないとダメだなと思うので、ちゃんと気付いたんですね、下級生だったのに。どうやって閉めたかまでは覚えてないんですけれど」

(中島アナ):愛月さんは、宙組、専科、そして星組といろいろな立場を経験されて、どういった役割をやってきたと考えていますか。

「宙組に入って、ずっと同じ組にいるのは素晴らしいことですけど、やっぱり甘えが出てしまう。すっしぃ(宙組組長の寿つかさ)さんをはじめ、素晴らしい上級生の方々に囲まれて、いつまでも『下級生の愛ちゃん』のままいられちゃう部分があったし、私は下級生に教えてあげることもあまり得意ではなかった。なので、専科に出て『宝塚巴里祭2019』やロマンチックコンサートを経験させていただく中で、他組の下級生との関わりで気づくこともたくさんありました」

「もっとこの貴重な出会いの間に教えてあげなきゃという気持ちから、人に言うことを覚えて。星組に入ってからはそんなに長くはいようとは思っていなかったので、いられる間に自分の男役を継承したいという思いで、気づいたことは何でも言っておくということを心がけていました」

「立場としてはこっちゃん(礼真琴)の下(2番手)で。やっぱりトップさんが一番大変なんですよ。きっと、私なんかの想像を絶するぐらい大変。舞台のことも大変ですし、それ以外のことも重責を背負っている。それを100パーセントは理解できないんですけれども、一番近いところにいる分、星組のみんなとの架け橋になれるような、そういう気遣いができたらと思っていました」

■「最後を見せて終わるのが美しい形」

(安藤アナ):退団のご挨拶がすごく印象的でした。宙組公演『美しき生涯』のセリフ、心情と重ねられた。どんな思いですか。

「『散ることを知らずに咲いている花よりも、終わりを知って色づいている紅葉の方が愛しいかと』。新人公演で(主演を)させていただいた石田三成のセリフです。このセリフが大好きで退団のあいさつを考えていたときに、自分の今の心情にピッタリだと思って決めたんです」

「ただがむしゃらに宝塚人生ずっと走り続けることも、もちろんとても美しい。けれど『ここまで』と決めて、自分の集大成、最後を見せて終わるのが美しい形なんじゃないかなと思ってやっていたので、その心情とこのセリフは本当にぴったりだったんです」

(後編に続く)

◇ ◇ ◇
アプレジェンヌ 〜日テレ大劇場へようこそ〜』は日テレNEWS24のシリーズ企画。元タカラジェンヌをお招きし、日本テレビアナウンサーで熱烈な宝塚ファンである、安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が、ゲストの宝塚時代・退団後の生き方に迫ります。アーカイブはYouTube「日テレNEWS」で期間限定配信中。