日テレNEWS
カルチャー
2013年12月17日 16:28

【先取りアクセス】やなせさん“戦争”語る

 今年10月13日に94歳で亡くなった「アンパンマン」の生みの親、やなせたかしさんが、最後のメッセージを1冊の本に残していた。「ぼくは戦争は大きらい」(小学館クリエィティブ刊)が今週、書店に並んだ。

 生前、やなせさんは「思い出したくないから」という理由で、戦争のことをあまり語って来なかった。
 今年の春先、同社が「戦争で体験した全体のことを語ってくれないでしょうか」と依頼したところ、数週間後に快諾の返事が来たという。

 同社の常務取締役、川村寛さんが作業を振り返る。
「自伝などで簡単に戦争のことに触れていますが、戦争体験だけをまとめて話すのはこれが初めてです。今年の4月から6月にかけて、少しずつ語ってもらいました。ほぼ2週間おきにうかがって、3カ月でトータル約10時間ほどになりました」。

 やなせさんは昭和15年春に召集を受け、九州・小倉の野戦重砲部隊に入隊した。招集期間満了直前の昭和16年12月8日、太平洋戦争が開戦し軍隊生活が延期に。その後、中国戦線に派遣され、上海郊外で終戦を迎えた。

 人殺しはもちろん、団体生活も嫌だったというやなせさんにとって、軍隊はばかばかしいだけの世界。語りの中で、戦争と軍隊を、ユーモアの切っ先で内部から風刺していく。特攻に志願した弟との別れなど、つらく悲しい思い出も吐露。笑いと涙の戦記に仕上がっている。

 やなせさんは8月に入院した。
「退院したら補足作業ができるか」と前出川村さんは考えていたが、最後のメッセージと命を引き換えたように、やなせさんは10月に帰らぬ人になった。
 「思い出したくない」と拒んでいたやなせさんが、命の最終段階で戦争体験、軍隊体験を語り、未来を生きる世代にラストメッセージを残した。
 日本に生まれた多くの子どもらの通過儀礼になっている「アンパンマン」同様、やなせさんの「ぼくは戦争は大きらい」が子どもらの通過儀礼になれば、と願う。(Q)