『乙嫁語り』森薫 &『北北西に曇と往け』入江亜季の展覧会を取材 「描き込み量がすごい」アナログの魅力
■アナログの手描きにこだわる2人の漫画家 繊細ながらも力強い作品
森さんは、東京都生まれ。高校時代より同人活動を開始し、2001年に、ビクトリア時代の身分を越えた恋物語を描いた『エマ』でデビューしました。2005年、同作が文化庁メディア芸術祭マンガ部門 優秀賞を受賞。現在、漫画誌『青騎士』で連載中の中央アジアの風物と美しい花嫁たちが登場する『乙嫁語り』は、2012年にフランスのアングレーム国際漫画祭で世代間賞を受賞。さらに、2014年にはマンガ大賞にも輝きました。
一方の入江さんは、香川県生まれ。森さん同様、高校時代より同人活動を開始し、2004年に読切作品『アルベルティーナ』でデビュー。2005年に『群青学舎』を発表。2008年、漫画誌『Fellows!』にて『乱と灰色の世界』の連載を開始。2012年、同作が文化庁メディア芸術祭マンガ部門 審査委員推薦作品に選出されました。現在、『青騎士』にてアイスランドの大自然のなかで消えた弟の行方を探る『北北西に曇と往け』を連載しています。
今回の展覧会は、大きく9つのエリアに分かれていて、600点以上の作品や関連資料が展示されています。
まず、入り口を抜けると待ち受けているのが、森さんと入江さんのプロフィルと代表作の原画です。そこには、展覧会のために書き下ろされたメインビジュアルも展示されています。
その先に進むと、森さんと入江さんの作品エリアに分かれていて、壁一面に漫画原稿やイラストが広がっています。同時期にデビューし、同じ雑誌で連載を重ね、ともに成長してきた森さんと入江さん。アナログの手描きにこだわり続ける2人が生みだす絵は、極めて繊細な線で描かれながらも、ペン先の力強さを感じることができます。
ほかにも、同人誌時代の作品やイラストレーション作品、さらに『漫画ができるまで』と題して、机周りや創作メモ、取材の様子なども紹介されています。
■来場者を取材 「圧倒された。絵のパワー、熱量が全然違う」
森さんの作品のファンだという30代の来場者は、展覧会の感想について「展示数がものすごかったので、非常に圧倒された。普段、電子書籍とか紙で読んでいるものと原稿のトーンのあととか、ホワイトの処理、絵の具で描いたようなあととか、絵のパワー、熱量が全然違うと思ったので、実際のライブ感を感じられるものすごくいい体験ができたなと思います」とコメントしました。
さらに、2人の作品の魅力について聞くと「お2人とも描き込みの量がものすごいので、本当に1ページ1ページ見るだけでも満足感がすごい。カラーのイラストだと森先生は重厚感、ずっしりとした絵の印象で、入江先生は軽やかな感じというか淡いけれど、しっかり描かれている印象を受けました。ただただ、じっと集中して(見て)ましたね」と、それぞれが生み出す作品の魅力を明かしました。