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元宝塚トップ・紅ゆずる「劇場を爆笑の渦にしたい」……稀代のコメディエンヌが追求する「笑い」の理想の形とは

2022年10月12日 20:10

(中島アナ):笑いを追求するという意味では、紅さんはコメディエンヌとして笑いをずっと追求されていたイメージがあります。

私、王道の宝塚を見てファンになってはいるんですけれども、もしトップスターになることができたら、宝塚大劇場・東京宝塚劇場を爆笑の渦にしてみたいというのが私の夢だったんです。大爆笑の劇場で「ここどこ?」みたいなことにしてみたいという夢が。

(中島アナ):(公演『ANOTHER WORLD』で)かなえましたね。

そうですね。初日の時に「やった!」と。

(中島アナ):本当に紅さんしか演じられないような(作品)で大爆笑。私これを観たときに思ったことが、お腹が痛くなるほどずっと笑っていられるのに、最後のセリフで涙が出てくる。(「生きてさえいりゃ、どんな苦労も乗り越えられる。いっぺん死んだ気イになってやってみなはれ、この世は極楽、命に感謝や!」)

あれね。1時間半やっているのはあのセリフを言うためなんですよ。ただ瞬発的に笑わせる笑いもあると思うんですけど、お芝居でやる場合は内容ありきの笑い。劇場を出ておうちに帰られた後も『ああこうだったかな』と思い出して笑っていただけるような物語が理想なんです。

なので、その時に「アハハって何発笑いが起こったか」というのを求めているわけじゃない。楽しかったなと笑顔で帰っていただける作品でかつ、そこでププッと笑えるものがあるというのは、私の最高の理想の形かなと思います。

(中島アナ):(観客の)2500人を笑わせるというのは、普通はできないことだと思います。どういうところにこだわって作っていったんでしょう。

笑わそうという頭からいってないです。特に『ANOTHER WORLD』は本(脚本)がものすごく面白かった。だからもうこの本に従っていれば、スパイラルをきかせるとかアクセントを持ってくるとかしなくても、それぞれの役に徹することができれば、あとは「間」の問題。この間はちょっとでもずれると「こけ間」なんです。全然面白くない。「こけ間」っていうのは見ていてとても不快な間なんですよね。

「今笑った方がよかった間?」みたいなのはあまり良くない。考えずにハハっと笑えるのが一番理想なんですよ。でないと「ここってこうだったのかな」と考えている間に物語が進んでいく。なので「こけ間」を作らないようにとは考えていましたが、決して「笑わせに行くぞ」とは作ってないんですよ。

(中島アナ):間の調整は、稽古をしながら皆さんでしていくんですか。

そうですね。例えば稽古場で先生方がいらっしゃる前に、自主稽古で固めたりするんですけれど、その時にセリフで「もうちょっとだけ食ってくれへんかな」とか立ち位置もっとこうやった方が面白いんじゃないか、とか。みんなで考えていました。

あとは舞台に入った時にやっぱり生もの。一回一回全く同じことは起こらないんです。やっているうちに慣れてきちゃう面もある。その時、その時じゃないと分からない。そこで「ちょっとこの間はつめてほしいな」といったことを(本番中に)伝えてもらうんです。はけた時とかに早変わりしながら私の楽屋で、伝える役目の子に立っておいてもらう。はけてきた時に伝えて、そしてまたバっと出ていく。

(中島アナ):場面場面ですぐに修正すると。

そうです。ただ、この役は全場出ていてなかなかはけなかった。なので、はけたら25秒ぐらいの間に水を飲みながら、「○○ちゃん、△△ちゃん」と名前だけは伝えて、終演後に「ああ、こうやったな」とその子に(詳しく)伝えてあげられたらという感じでやっていました。

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