【白雪姫】実写化がなぜ議論に?研究者が「プリンセス最終形態」と語る“新しいプリンセス像”
■“いつか王子様が来てくれる”ではない 実写映画『白雪姫』
実写映画『白雪姫』を見たときの率直な感想はいかがでしたか?
東京大学大学院博士課程 山本恭輔さん:
『白雪姫』を今やって、充実して見られる形になるんだなと。
白川:新しいヒロイン像で、私も楽しませていただきました。
山本:実写版はかなり新曲が増えていて、追加された曲は史上最多だと思います。その中で印象的なのは、プリンセスが願いについて歌う曲『いつか王子様が(原題:Someday My Prince Will Come)』がなくなり、新しい『夢に見る~Waiting On A Wish~』という曲に変わっていたところです。
「いつか白馬の王子様が来てくれる」というイメージを今やるかっていうと、やってもいいんだと思うんですけど、それをしなかったというのはディズニーにとって大きな決断だと思いました。曲とキャラクターのイメージがすごく結びついている中、その曲を抜いて、でも、「じゃあ、白雪姫らしさって何?」というところを追求していたのはすごく面白かったです。
白川:『夢に見る~Waiting On A Wish~』が象徴するように、ヒロイン像の新しさが歌の中にすごく表れていましたよね。
■「この世で一番美しいのはだれ?」英語だとわかる2つの意味
白川:今作のキーワードになっている英単語があったと思いますが、それは何ですか?
山本:「Fair」です。有名な「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?」ときく場面での“一番美しい”は、アニメ版でも「Fairest」を用いています。
白川:「Who is the fairest one of all?」と言っていましたね。
山本:「Fair」の解釈として、「美しい」というのもありますが、公正という意味も。
白川:フェアプレーなどの「フェア」ですよね。辞書で引くと先に「公平・公正」という意味が出てきて、下に「美しい・色白である」があるという、両方の意味を持つ言葉です。
山本:「Fair」の解釈を大きく転換することで、セリフはそのままなのに、すごく厚みが加わったテーマになりました。「白雪姫はプリンセスとしてどうあるべきなのか」ということにつながっています。
今までのプリンセスは「1人の女性としてどう大人になるか」という話になりがちでした。しかし今回は、「統治者としてどうあるべきか」というところに「Fair」をもってきて、王として、統治者になっていくという話になっているのは新しかったと思います。
白川:元々のアニメ版で美しいという意味で使われた「Fair」を、「公平・公正」という意味に入れ替えたらどういうヒロインになるだろう?ということを、制作者は考えて膨らませていったのかなと思います。