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経済
2011年1月2日 21:40

TPP参加に向けた政府の課題

 菅首相は「第2の開国」を宣言し、TPP(=環太平洋経済連携協定)への参加を目指す方針を去年、打ち出した。「TPP参加に向けた政府の課題」について、経済部・大野伸デスクが解説する。

 TPPはシンガポールなど4か国の間で06年に発効した経済連携協定で、原則的に例外を認めない関税撤廃を行い、貿易の自由化を実施しているのが特徴。当初は注目度の低い協定だったが、10年に入ってアメリカが参加を表明したことで、参加国の拡大と新たな枠組みへ向けて大きく動き出した。アメリカは、今年11月にハワイで開催される予定の次回APEC(=アジア太平洋経済協力会議)の時期までに、TPPに参加する条件などを各国で合意したい考え。

 日本としても、この時期までには正式に参加するための体制を整えなければならない。こうした状況から、今年は日本の通商政策にとって重要な分岐点となることは確実だ。

 なぜ、日本にとって通商交渉が重要なのかは、もはや議論するまでもなく、日本は輸出に依存した工業国だからである。さらに、日本の経済連携交渉はすでに韓国に大きく後れを取っている状況だ。こうした中で、TPPに参加しなければ、ますます企業の国際競争条件が不利になる可能性が高い。

 同時に重要なのは、冷戦期の「防衛安保」から冷戦後の「経済安保」へ変化を遂げているという視点。世界経済がボーダーレス化する中で市場をどう補完し合い、競争関係を高めていくか、その中で国と国の関係も均衡を保つということが極めて重要になっている。日本が加入できる条件にないと判断されれば、輸出国としての日本の地位が危ないばかりか、重要な同盟にも乗り遅れることになる。

 しかも、すでにTPPの合意に向けた条件協議は各国間で本格化しており、日本は情報収集しかできない状況にある。早急に前向きな決断をしなければ、ますます日本にとって厳しい条件となることは必至だ。

 一方で、経済の大きな自由化の流れに加わるという決断は、菅首相の言う「第2の開国」というに等しい重要なものであるもかかわらず、国内の農業団体や農水族議員、地方自治体などの理解をどう得るのか、具体的な対策は打ち出せていない。

 政策的にも、農水省は国内農業の「保護」を中心にこれまで通商政策を考えてきたが、今後は国内農業の「競争力強化」を力点に、産業支援や産業育成という政策に転換することが重要になる。しかし、農水相どころか、通商交渉を担う経産相までもがそもそもTPP参加に慎重な姿勢で、閣内がまとまるのかも不透明な情勢となっている。

 与野党ともに慎重な議員は少なくなく、まさに菅首相の相当なリーダーシップをもって国内での理解を得るべく早急に具体的な行動を取らなければ、時間切れとなる危険性は高い。「第2の開国」も「黒船」頼みとなれば、歴史の教訓を学んでいないといわざるを得ない。