「無意識のバイアス」日本は払拭できるか?

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「人財競争力 日本22位」。「ChangeWAVE」代表の佐々木裕子さんに聞いた。
人材サービスを手がける会社の調査によると、「人財を獲得・育成・維持する能力」のランキング上位は1位がスイス、2位がシンガポール、3位がアメリカだった。日本は2018年から2つ順位を落として、125か国中22位だった。
日本の評価を具体的にみると、「働く場所としての魅力」に関しては、女性がリーダーになるチャンスや留学生が少ないことから45位、また「育成する力」に関しては、20位などとなっている。
――佐々木さんの意見をお願いします。
『無意識のバイアス』と書きました。その前に、45位の「働く場としての魅力」について説明したいと思います。もともとこの人財競争力の調査が何を測っているかというと、「新しい成長を牽引(けんいん)するイノベーションを起こせる人材がどれくらい輩出できるか、若しくはそういう環境があるか」という国力を調査したものです。
当然、新しいものというのは、異質なものの組み合わせで起こることが多く、多様なものに対してオープンであるかどうかは大きなポイントになります。だから、多様な人がこの国で働きたいと思ったり、活躍したいと思えるかが、この「働く場の魅力」ということになります。
――一方で「ビジネスのやりやすさ」というのは6位と、かなり上位に入ってきています。これは逆な気もしますね。
市場としては規制もさほど厳しくないですし、いろんなものが新しく生まれる場ではあると思うんですが、残念ながら多様な人たちに対する「オープンさ」は、実は125か国中90位ぐらいだったりします。留学生や女性が活躍するには大きなハードルがあるということなんです。
――さて、その『無意識のバイアス』、これはどういうことなんでしょう。
なぜハードルがあるかというのを深く考えていくと、最初に機会提供がなかなかされない構造があると思います。例えば、1歳の子どもがいる女性に海外出張させるかとか、留学生に社長をやらせるかとなったら「どうだろう」となったりするわけです。これは「無意識のバイアス」と言われていて、何となく経験則でこんなことが起きてしまうんじゃないかと思ってしまう、その仕組みになります。なので、この「無意識のバイアス」をちゃんとコントロールできるかが、大きなポイントになるかと私は思っています。
――ということは上位の国は、それができているということですが、今後日本はどういう方向に進むべきでしょうか。
私は進んだほうがいいと思います。日本はこれから少子高齢化社会になっていくし、いろんな人がいろんなことをやれるチャンスがたくさん生まれたほうが、良い社会になると思うんです。
ただ、この「無意識のバイアス」って、コントロールがしにくいと言われています。例えば、スイスやシンガポールなども相当努力して、今のようになっています。だから、いろんなバイアスがかかる中で、「チャンスをあげるのは難しい」と思った時に、実はそうじゃないのではと思える自分たちのキャパシティーがこれから重要かなと思います。
■佐々木裕子さんプロフィル
「ChangeWAVE」代表。企業の「次世代リーダーの人材育成」や「組織変革」を通じて、「人」と「組織」の変革をサポートしている。「変革のプロ」として、これまで450の企業、2000人以上を後押ししてきた。自治体職員と民間の若手社員が協働で地域課題を解決する「MICHIKARA」や、異業種で営業変革に取り組むプロジェクト「エイカレ」など、企業を巻き込んで社会課題の解決と変革を仕掛けている。また、介護に関するコンサルティングを手がけるリクシスの代表として介護の改革にも取り組んでいる。
【the SOCIAL opinionsより】