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ミニ解説)日産が7000億円赤字予想発表・経営は大丈夫なの?

2025年4月25日 7:00
ミニ解説)日産が7000億円赤字予想発表・経営は大丈夫なの?

日産自動車は24日、2024年度の業績見通しを下方修正した。当期純利益が7000億円から7500億円の赤字となる見通しで、前回2月の見通しの800億円の赤字から大幅に悪化した。下方修正の理由についてQ&A方式で解説する。

Q.最大7500億円の最終赤字とは大きい額だと思うが、経営は大丈夫なのか?

A.日産のバランスシートを見てみると、連結純資産は6兆円(2024年9月)なので、たとえもし純損失が1兆円に膨れたと仮定しても債務超過になるようなものでもない(5兆円以上の余裕)。また売上高も12兆6000億円の見通しなので、「急に倒産するようなものでもない」(公認会計士・泉範行氏)という。

Q.なぜ赤字見通しが10倍近くに拡大したのか?

A.日産によれば5000億円分は「減損」だ。これまで日産は工場など生産設備の資産価値を「自動車500万台分を生産する」という前提で算定していた。しかし、今年度の販売台数は335万台の見込み。ターンアラウンド(経営再建計画)では、販売台数が350万台でも対応できるコスト構造にするなど、規模の適正化を進めていて、資産価値を評価し直した。「関税やEVの需要が低下している中で、将来を見通したときに生産台数500万台とはならない」(日産広報永井志朗氏)。そうした中、北米、中南米、ヨーロッパ、日本の資産を「徹底的に見直した」という。アルゼンチンからの生産撤退やタイの生産ラインの削減も減損処理している。

Q.では、入ってくる予定だった利益が消えたというわけではないということか?

A.そう。帳簿上の評価を事業規模に合わせて引き下げたということ。一方で、アメリカでの早期退職者への退職金の支払いなど、構造改革での実質的な損失もある。

Q.社長が変わったけれど、再建は進んでいるのか?

A.4月1日に就任したばかりだけれど、スピーディーに改革を進めていると日産関係者は期待を示している。

一つはこの業績修正。暗い発表ではあるけれど、徹底した資産レビューを実施した。イヴァン・エスピノーサ社長は「今後の事業安定化に向けたもの」と説明している。前に進むためには必要なプロセスといえる。

もう一つはイギリスの自動運転技術開発企業「Wayve」との提携。生成AIを使った自動運転ソフトで、日産広報によれば「(限られた区間だけでなく)家の駐車場から目的地まで、複雑な交通状況に対応できる高度な技術」で、2027年度から市販車に搭載するという。もともと商品戦略を担当していたエスピノーサ氏が社長になって、早速カラーがあらわれたようだ。

◆日産、これから…
2月にホンダとの提携検討を白紙にした日産。「ではどう再建するのか?」厳しい目が注がれている。

「日産には、かつての日産マーチのように、ヒットする車をつくって復活してほしい」という声もあるが、「R&D(研究開発費)が削られれば、大きくネガティブにきいてしまう。戦略的に進める必要がある」(大手証券アナリスト)という指摘もある。

「私は日産はこんなものではないと心から信じております」。イヴァン・エスピノーサ社長は次期社長としての3月の会見でこのように述べた。「こんなものではない日産」をいつ見せられるか。日産は、戦略の進捗を発表する準備を進めている。(決算発表は5月13日の予定)

■解説委員・安藤佐和子

最終更新日:2025年4月25日 22:24