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雲の上はいつも晴れ!? 宇宙太陽光発電とは

2022年2月12日 13:08
雲の上はいつも晴れ!? 宇宙太陽光発電とは
宇宙太陽光発電のイメージ図

脱炭素への主力電源とされる、太陽光などの再生可能エネルギー。しかし太陽光では夜間や曇りの日などは発電できぬ課題も。ならば、常に太陽が出ている“宇宙空間”に太陽光パネルを設置しようという、SF映画さながらの壮大な計画が進んでいる。その可能性と課題とは。

■稼働率ほぼ100パーセント? 宇宙で太陽光発電

SF映画でイメージするような計画は、現実に進んでいる。

政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするとしており、再生可能エネルギーを「主力電源」に位置づけている。現在、その再生可能エネルギーのなかで最も高い割合を占めているのが太陽光発電だ。

しかし、太陽光発電は発電量が天候に大きく左右される。特に、曇りがちな冬場は発電量がゼロとなる日も多く、結局火力発電などを動かして供給の調整をすることになる。

それならば“常に太陽光があたるところで発電すれば良い"という発想を元に進んでいるのが、宇宙太陽光発電の計画だ。

■はるか宇宙で進められる壮大な計画

京都大学の篠原真毅教授らが進めるのは、地上から3万6000キロメートルの宇宙空間に人工衛星を打ち上げて、太陽光パネルを設置する計画だ。2050年には商用発電所として運用を始める想定だという。

2キロメートル四方の巨大なパネルを展開することで、大型の火力発電所1基分の発電が可能となると試算されている。地上での太陽光発電の稼働率がわずか14~15%であるのに対して、宇宙で発電すればほぼ100%、365日24時間発電ができることになる。

しかし、宇宙でどれだけ効率よく発電しても、それの電気が地上で使えなければ意味がない。実は宇宙で発電する構想自体は50年ほど前からあったものの、この送電方法が壁の1つになっていた。

篠原教授らが研究しているのは、電子レンジや携帯電話に使われる“マイクロ波"を使って電気を送る計画だ。太陽光発電で集めたエネルギーを、マイクロ波に変えて、携帯電話と同じようにアンテナを使って地上に送る。地上では直径2キロメートルほどの土地に受電用のアンテナを置き、エネルギーを受け取って電気に変換する。

このマイクロ波での送電の仕組みを利用して、電子機器に充電器をささなくても自由に充電できる"ワイヤレス給電”の技術はすでに確立している。この技術を一般に広く利用できるよう、総務省でも法整備が進んでいる。篠原教授は、かつては「夢があって良いね」という言われ方もした宇宙発電が、ビジネスと結びついて、良いサイクルができていると話す。

■乗り越えるべき壁も…

技術も少しずつ確立されてくる中で、課題とされるのは“宇宙での巨大な発電所を、どのように建てるか”という点だ。

計画で想定しているのは、2キロメートル四方、重さ1万トン規模の設備。宇宙に浮かぶ最大の人工物である国際宇宙ステーションでも、100メートルあまりの大きさ。それをはるかに上回る大きさとなる。

また、現在ロケットを1回飛ばして運ぶことのできる重さはおよそ10トン。このため宇宙に太陽光の設備を作るためには、ロケットを1000回ほど往復させる必要があるという。

実現には、安く簡単に宇宙を往復できるロケット技術の進歩も不可欠だ。国が今後の宇宙政策をまとめた「宇宙基本計画」では、宇宙太陽光発電の実用化に向けた技術の進展を図ると明記した。

さらに、2025年度をめどに送電技術の実証を目指すとしている。宇宙にある太陽光パネルで発電をするのが“当たり前”となる日はくるのか。

壮大な計画の行く末に、期待が集まる。