×

海外に活路…世界を酔わせる「日本の酒」 NYに酒蔵が誕生 市場開拓の舞台裏

2023年5月26日 20:42
海外に活路…世界を酔わせる「日本の酒」 NYに酒蔵が誕生 市場開拓の舞台裏

日本国内で酒の需要が低迷する中、いま海外に活路を見いだそうとする動きが強まっています。海外への酒類の輸出は、この10年で7倍以上に増加。日本酒だけでなく、ウイスキーやウオッカなど「日本の酒」が世界に広がりつつあります。市場開拓の舞台裏を取材しました。

   ◇

アメリカ・ニューヨークの若者が集うバーで、客がグラスでたしなんでいるのは「日本酒」です。


「We love Sake!(日本酒大好き!)」
「日本酒は楽しい飲み物よ」
「甘みがあるのが好きだわ」

アメリカで日本酒の人気が高まる中、この春にはニューヨークに「酒蔵」が誕生しました。約80億円をかけて初の海外生産拠点を完成させたのは、「獺祭」を醸造する旭酒造です。

本格的に日本酒造りが始まった蔵では、現地のスタッフが原料となるお米を並べていました。日本酒の「味」や「香り」を決める麹(こうじ)づくりの作業です。

日本人杜氏(とうじ)
「もう少し早く!(手を動かして)」

現地スタッフ
「素早くですね。(上半身を曲げて行う作業なので)背中が痛くならなければ、もう少し楽なんですが…」

旭酒造の桜井博志会長は「『獺祭』にとって将来の理想的な姿は(売り上げの)1割が国内、9割が海外」と話します。

日本国内で酒の需要が低迷する中、海外への酒類の輸出は、この10年で7倍以上に増加。2021年に初めて1000億円を突破すると、去年は1400億円近くまで急成長しています。

   ◇

日本酒とともに、海外輸出のけん引役を担うのが“ウイスキー”です。去年6月、アメリカのオークションでサントリーの「山崎55年」が日本円にして8000万円を超える高額で落札されました。

いま、「ジャパニーズウイスキー」の人気が世界的に過熱しています。その仕掛け人が、サントリーホールディングスの新浪剛史社長です。“海外市場にかける思い”を聞きました。

サントリーホールディングス 新浪剛史社長
「日本だけでなく、世界中のお客さまにエンジョイしていただきたい。一番のポイントは“ものづくり”。日本はいま、なかなか世界中で勝てなくなってきたと。でも私たちは世界で勝てるんだと」

市場開拓の“一丁目一番地”だというニューヨーク。新浪社長が、出張の際に必ず行うという現地視察に同行しました。気にしていたのは、海外限定でハイボール向けに販売しているウイスキー「季(とき)」の売れ行きです。

サントリーホールディングス 新浪剛史社長
「『季』の品質や、お客さまからの反応はいかがですか」

小売店のマネジャー
「アメリカには日本のような“ハイボールを飲む文化”がありませんからね。缶でおいしいハイボールを買うことができれば、次は『ボトルを買ってみよう』となるのではないでしょうか」

さらに、いま力を入れているのが「日本のお米からつくったウオッカ」です。日本産ウオッカをアメリカのバーに売り込むための商談にも同行しました。

ビームサントリー営業担当 久米川丈二さん
「今日は『HAKU』という日本のクラフトウオッカを持ってきました」

バーテンダー
「味見してみましょうか。(一口味わって)すっきりしていて口当たりは軽いのに、豊かな感触ですね。常温なのにおいしいですね」

ウオッカを使ったカクテルをメニューに採用してもらうことで、販路拡大につなげる狙いです。

バーテンダー
「日本の蒸留酒は細部にまでこだわり、非常に洗練された側面がある。アメリカのカクテル文化に、日本のお酒の“居場所”があると思います」

加速する「日本の酒」のグローバル化。世界を酔わせる日が近づいています。

    • 日テレNEWS NNN
    • 経済
    • 海外に活路…世界を酔わせる「日本の酒」 NYに酒蔵が誕生 市場開拓の舞台裏