JAがコメの集荷に苦戦 農家の所得向上とコメの安定供給目指す中 挽回に向け奔走
改めて「内金」とは、JAがコメを集める際に生産農家に支払う仮払金のこと。JA越前たけふは「内金」を大幅に増やし、例年なら、収穫前の夏ごろに決まるところを、田植えが始まる前のこのタイミングで提示しました。背景にはコメの集荷に対する危機感があるようです。
JA越前たけふのコメの集荷率は65パーセントと、全国でもトップクラスを誇っていましたが、昨シーズンはおよそ5割に落ち込みました。
■JA越前たけふ 指導部 大久保昌尚部長
「昨年で2万俵ぐらい集荷負けしているというか、集まらなかった分があるので、何もしなければ今年も2万俵程度集荷できない」
今シーズンは主食用のコメの生産量が720トン増える見込みに対し、これまでに農家と仮契約できた量は逆に240トン少なく、民間の業者に流れた可能性があります。
■大久保昌尚部長
「転売業者というか、ブローカーは60キロ 3万・4万円で流通しているので、そういったところで精米5キロの価格が4000円以上になって」
そこで営農指導にあたる職員が生産農家を訪問し、これまで出荷した先や、希望の買い取り価格などの調査に乗り出しました。
■生産者
「2万円超える値段で最低維持してほしい ずっと続けられるか心配 過去もコメ不足で高い時があったが、その後ずっと下がって農家は辛い思いをした」
■指導員
「それくらい出せるよう、JAも、24年産も出せるように一生懸命、高値販売で頑張っているので」
■生産者
「農家の立場だと高いところに行きたい 農協と国も含めて、計画していかないと、場当たり的にやったら大変なことになる 5年後はもっとひどい状態になる」
ヒアリングの結果、JA以外の業者に販売した生産者は4割近くを占め、今シーズンも3割あまりが民間業者への出荷を検討していることがわかりました。
■大久保昌尚部長
「危惧しているのは、以前からの付き合いというところで、一度よそと付き合いができてしまうと、これからも出荷されることになるので、今までJAの強みだった、民間の人との付き合いが強まることになると、昨年無くなった2万俵は戻ってこない」
またコメの需要の高まりで、主食用の生産が優先され、JA越前たけふの管内では、家畜のエサとなる飼料米の栽培が6分の1に減少していて、「暮らしへの影響」も心配されています。
■養鶏業者との会話
「コメが足りないと、主食用米に切り替えると、ちょっと厳しい」
「卵とか高くなってきてしまう可能性がある?まあそうだ エサ代生産コストが上がると? そうだ」
生産農家からコメを集めているのはJAだけではないんですね。
民間の業者が、JAを上回る買い取り価格を提示し、去年にも増してコメの集荷競争が激しくなっているようです。
JA福井県も先日、コシヒカリの買い取り価格の最低保証額を60キロ当たり2万2000円と提示しましたが、これも激しい集荷競争を意識した動き。
肥料代や燃料費が膨らむ中、JAでは農家の所得向上とコメの安定供給を目指したいとしていますが、競争が過熱すれば、今年の新米価格の高騰も心配されます。