新ローマ教皇決定の瞬間 “秘密の選挙”「コンクラーベ」舞台裏…「レオ14世」の素顔【バンキシャ!】
新しいローマ教皇を決めるため、閉ざされた部屋の中で行われた「コンクラーベ」。バンキシャ!は、実際に投票を行った133人の枢機卿のひとりである、前田万葉枢機卿に話を聞きました。“秘密の選挙”と呼ばれる「コンクラーベ」の舞台裏が見えてきました。
◇
日本時間5月9日。バンキシャ!はバチカンへ。広場には、新しい教皇が決定したことを知らせる「白い煙」を見るため、多くの人が集まっていた。
出会ったのは、愛知県から来たという日本人夫婦。
愛知から来た夫婦
「ちょうど新婚旅行でたまたま来ていて。煙が出るまでせっかくなので見ておこうと思って」
インタビューから20分ほどたった、そのとき。
バンキシャ!
「白い煙!」
「いま白い煙が上がりました」
「白い煙あそこ見える?」
「いま白い煙が上がりました」
「新しい教皇が決まりました」
「すごい歓声です」
「すごい新婚旅行ですね」
新婚旅行 愛知から来た夫婦
「たまたま見られて良かったです」
バチカンの空に、白い煙が上がった。そして…
バンキシャ!
「出てきました。手を振っています」
第267代ローマ教皇、レオ14世。アメリカ出身として初めての教皇だ。
新教皇を選ぶために行われたのが、コンクラーベと呼ばれる選挙。閉ざされた部屋で世界から集まった133人の枢機卿が投票。誰かが3分の2以上の票を獲得するまで続けられる。秘密の選挙。中では何が行われていたのか。
バンキシャ!は、コンクラーベに参加した日本人の枢機卿を取材。選挙の舞台裏に迫った。
コンクラーベに参加 前田万葉枢機卿
「全然、みんな和気あいあい。形式張った難しい雰囲気ではなかった」
◇
9日、東京都内の映画館。
バンキシャ!
「こちらの映画館には多くの人が来ています」
そのお目当ては、映画「教皇選挙」。枢機卿たちが思惑や策略が渦巻く中、新たな教皇を選出する過程を描いた作品だ。
現実でもコンクラーベが行われることになり、上映する映画館が急増するなど注目度が増している。
映画「教皇選挙」を見に来た人
「教皇選挙が行われているので気になって見ました」
今回のコンクラーベで新しい教皇が決まったのは、開始から2日目だった。
日本時間10日、バンキシャ!が話を聞いたのはコンクラーベに参加し、投票した前田万葉枢機卿。
実は映画ではこんなシーンが描かれていた。
「内密なお話が…」
「選挙は戦争じゃない」
「いや、戦争だ!」
映画で描かれた策略、実際には…
バンキシャ!
「(実際の)コンクラーベ中、どんな雰囲気だった?」
コンクラーベに参加 前田万葉枢機卿
「全然、みんな和気あいあいとしゃべりながら、形式ばった難しい雰囲気ではなかったですね」
映画とは違い、なごやかな雰囲気だったという。
実は前田さん、コンクラーベの参加が初めてだったこともあり、勉強のため事前に映画を鑑賞。予習して本番にのぞんでいた。
前田枢機卿
「ある神父から『よかったよ』『教皇選挙は練習とか準備のために見た方がいいよ』と言われて。そのとき私も『そうか』と。映画は何十年ぶりくらいに見に行った」
映画の中で特に役に立ったというシーンが、投票のやり方だ。
「皿の上に(投票用紙を)のせて、皿を引くと(紙が)下に落ちていく。映画と全く同じようなものでした。仕掛けからつぼみたいなものから」
独特な投票の仕方だったが、映画での予習が役に立ったという。そして投票が終わり、開票が始まると…
前田枢機卿
「1枚1枚開いて、ずっと名前を呼びながら発表するんです。そして最後に誰がいくらっていうのは言わないけど、だいたいみんな名前を呼ぶので自分でチェックして」
バンキシャ!
「この人さっきも呼ばれたっていうのでなんとなく?」
前田枢機卿
「私の場合は正の字で12345って」
バンキシャ!
「正の字を書いて?」
前田枢機卿
「名前のところにつけていきましたから。誰が何票っていうのは自分でわかりました」
「(投票の)1回目、2回目あたりで候補者が絞られてきたという感じ」
そして4回目の投票で新しい教皇が決定。その瞬間、枢機卿たちは…
前田枢機卿
「(決まった)瞬間は拍手がありました」
「神様が決めたこと、聖霊が導いたと捉えますから、(枢機卿たちは)自分が『この人』と思った人じゃなくても、手をたたいて祝福しました」
そしてもうひとつ、バンキシャ!が注目したのが、枢機卿たちの食事。投票する枢機卿たちは、新しい教皇が決まるまで外部との接触は禁止される。そのため食事も、提供されたものを一斉に食べるという。
前田枢機卿
「フランス語グループ、英語グループ、というような感じで食事のときには会話がしやすい食卓ができたような感じかな。でも枢機卿たちはどの言葉でもだいたい通じていますからね。通じてないのは私ぐらいで」
「(料理は)普通のレストランみたいな感じでした。最後に果物が出てね」
料理にはどんなこだわりがあったのか。
バンキシャ!が話を聞いたのは、イタリア保健省で相談役を務める栄養科学の専門医。バチカンから、枢機卿に提供する料理のメニュー作りを依頼されたという。
コンクラーベの食事提案 カラブレーゼ医師
「朝ご飯を食べてから昼ご飯まで、頭がさえるように栄養を摂取しなければなりません」
「そのためには多めの糖質が必要で、脂質は控えなければなりません」
ランチメニューでは消化が良くエネルギーを十分に補給できる料理として「豆のリゾット」を提案したという。
そこで、バチカンでも食べられている一般的な「豆のリゾット」を再現してみることに。協力してくれたのは、都内にあるイタリアンレストラン。
トレガッティ オーナーシェフ 眞壁貴広さん
「お米と白インゲン豆を煮たもの。これだけです」
「(イタリア)家庭ではごくシンプルな料理が多いです」
炒めた米に野菜と鶏で出汁をとったスープを入れる。20分ほど煮詰め、米が炊けたところで白インゲン豆を投入。再び煮詰めて最後にチーズをかけて完成。
(コンクラーベに参加した)前田枢機卿
「もちろんおいしく食べたし、ちょうどいい感じでしたね」
こうした料理を食べながら進められたとみられる今回のコンクラーベ。
◇
新しいローマ教皇に選ばれた、レオ14世。どんな人物なのか?
バンキシャ!は、長崎県へ。実は、レオ14世は、過去にこちらのカトリック教会を訪れたことがあるという。見せてもらったのは…
カトリック城山教会 今田昌樹神父
「17年近く前の2008年11月(に撮影した写真)です」
カメラに向かって微笑むレオ14世の写真。右手で箸を持ち食べていたというのが…
今田神父
「おそらくうどんだったかなと思います」
「上手かどうかは別として、箸ですしを食べていたのを記憶しています」
さらに、案内してもらったのは…
今田神父
「この部屋で歓迎会をして、ここでお食事をしました」
歓迎会では地元料理が出され、刺し身にも箸を伸ばしていたという。ローマ教皇庁の公式行事として長崎を訪れていた、レオ14世。
「隠れキリシタン」が身を隠していたとされる洞窟も訪れ、祈りをささげていたという。慣れないことにも積極的に関わり、交流を大切にする人だったという。
今田神父
「その人たちが大切にしているいろいろな文化、それを自分も大切にするというひとつの姿勢の表れなので、みんなうれしかったと思います」
レオ14世は、固有の文化を重んじていたという。新教皇として世界にどう影響を与えていくのか。
宗教と国際政治に詳しい専門家は…
日本大学 松本佐保教授
「改革派と保守派の間の非常にバランスが取れた人、という評価ができると思います」
「国際情勢がいま非常に不安定な状況になっているので、新しい教皇は『安定』ということをキーワードとして言っています」
「やはりそういうところがいま世界で求められている」
「ロシアとウクライナの戦争だったり、中東の情勢だったり、世界の紛争をどう仲介されるかを一番注目します」
*5月11日放送「真相報道バンキシャ!」より
◇
日本時間5月9日。バンキシャ!はバチカンへ。広場には、新しい教皇が決定したことを知らせる「白い煙」を見るため、多くの人が集まっていた。
出会ったのは、愛知県から来たという日本人夫婦。
愛知から来た夫婦
「ちょうど新婚旅行でたまたま来ていて。煙が出るまでせっかくなので見ておこうと思って」
インタビューから20分ほどたった、そのとき。
バンキシャ!
「白い煙!」
「いま白い煙が上がりました」
「白い煙あそこ見える?」
「いま白い煙が上がりました」
「新しい教皇が決まりました」
「すごい歓声です」
「すごい新婚旅行ですね」
新婚旅行 愛知から来た夫婦
「たまたま見られて良かったです」
バチカンの空に、白い煙が上がった。そして…
バンキシャ!
「出てきました。手を振っています」
第267代ローマ教皇、レオ14世。アメリカ出身として初めての教皇だ。
新教皇を選ぶために行われたのが、コンクラーベと呼ばれる選挙。閉ざされた部屋で世界から集まった133人の枢機卿が投票。誰かが3分の2以上の票を獲得するまで続けられる。秘密の選挙。中では何が行われていたのか。
バンキシャ!は、コンクラーベに参加した日本人の枢機卿を取材。選挙の舞台裏に迫った。
コンクラーベに参加 前田万葉枢機卿
「全然、みんな和気あいあい。形式張った難しい雰囲気ではなかった」
◇
9日、東京都内の映画館。
バンキシャ!
「こちらの映画館には多くの人が来ています」
そのお目当ては、映画「教皇選挙」。枢機卿たちが思惑や策略が渦巻く中、新たな教皇を選出する過程を描いた作品だ。
現実でもコンクラーベが行われることになり、上映する映画館が急増するなど注目度が増している。
映画「教皇選挙」を見に来た人
「教皇選挙が行われているので気になって見ました」
今回のコンクラーベで新しい教皇が決まったのは、開始から2日目だった。
日本時間10日、バンキシャ!が話を聞いたのはコンクラーベに参加し、投票した前田万葉枢機卿。
実は映画ではこんなシーンが描かれていた。
「内密なお話が…」
「選挙は戦争じゃない」
「いや、戦争だ!」
映画で描かれた策略、実際には…
バンキシャ!
「(実際の)コンクラーベ中、どんな雰囲気だった?」
コンクラーベに参加 前田万葉枢機卿
「全然、みんな和気あいあいとしゃべりながら、形式ばった難しい雰囲気ではなかったですね」
映画とは違い、なごやかな雰囲気だったという。
実は前田さん、コンクラーベの参加が初めてだったこともあり、勉強のため事前に映画を鑑賞。予習して本番にのぞんでいた。
前田枢機卿
「ある神父から『よかったよ』『教皇選挙は練習とか準備のために見た方がいいよ』と言われて。そのとき私も『そうか』と。映画は何十年ぶりくらいに見に行った」
映画の中で特に役に立ったというシーンが、投票のやり方だ。
「皿の上に(投票用紙を)のせて、皿を引くと(紙が)下に落ちていく。映画と全く同じようなものでした。仕掛けからつぼみたいなものから」
独特な投票の仕方だったが、映画での予習が役に立ったという。そして投票が終わり、開票が始まると…
前田枢機卿
「1枚1枚開いて、ずっと名前を呼びながら発表するんです。そして最後に誰がいくらっていうのは言わないけど、だいたいみんな名前を呼ぶので自分でチェックして」
バンキシャ!
「この人さっきも呼ばれたっていうのでなんとなく?」
前田枢機卿
「私の場合は正の字で12345って」
バンキシャ!
「正の字を書いて?」
前田枢機卿
「名前のところにつけていきましたから。誰が何票っていうのは自分でわかりました」
「(投票の)1回目、2回目あたりで候補者が絞られてきたという感じ」
そして4回目の投票で新しい教皇が決定。その瞬間、枢機卿たちは…
前田枢機卿
「(決まった)瞬間は拍手がありました」
「神様が決めたこと、聖霊が導いたと捉えますから、(枢機卿たちは)自分が『この人』と思った人じゃなくても、手をたたいて祝福しました」
そしてもうひとつ、バンキシャ!が注目したのが、枢機卿たちの食事。投票する枢機卿たちは、新しい教皇が決まるまで外部との接触は禁止される。そのため食事も、提供されたものを一斉に食べるという。
前田枢機卿
「フランス語グループ、英語グループ、というような感じで食事のときには会話がしやすい食卓ができたような感じかな。でも枢機卿たちはどの言葉でもだいたい通じていますからね。通じてないのは私ぐらいで」
「(料理は)普通のレストランみたいな感じでした。最後に果物が出てね」
料理にはどんなこだわりがあったのか。
バンキシャ!が話を聞いたのは、イタリア保健省で相談役を務める栄養科学の専門医。バチカンから、枢機卿に提供する料理のメニュー作りを依頼されたという。
コンクラーベの食事提案 カラブレーゼ医師
「朝ご飯を食べてから昼ご飯まで、頭がさえるように栄養を摂取しなければなりません」
「そのためには多めの糖質が必要で、脂質は控えなければなりません」
ランチメニューでは消化が良くエネルギーを十分に補給できる料理として「豆のリゾット」を提案したという。
そこで、バチカンでも食べられている一般的な「豆のリゾット」を再現してみることに。協力してくれたのは、都内にあるイタリアンレストラン。
トレガッティ オーナーシェフ 眞壁貴広さん
「お米と白インゲン豆を煮たもの。これだけです」
「(イタリア)家庭ではごくシンプルな料理が多いです」
炒めた米に野菜と鶏で出汁をとったスープを入れる。20分ほど煮詰め、米が炊けたところで白インゲン豆を投入。再び煮詰めて最後にチーズをかけて完成。
(コンクラーベに参加した)前田枢機卿
「もちろんおいしく食べたし、ちょうどいい感じでしたね」
こうした料理を食べながら進められたとみられる今回のコンクラーベ。
◇
新しいローマ教皇に選ばれた、レオ14世。どんな人物なのか?
バンキシャ!は、長崎県へ。実は、レオ14世は、過去にこちらのカトリック教会を訪れたことがあるという。見せてもらったのは…
カトリック城山教会 今田昌樹神父
「17年近く前の2008年11月(に撮影した写真)です」
カメラに向かって微笑むレオ14世の写真。右手で箸を持ち食べていたというのが…
今田神父
「おそらくうどんだったかなと思います」
「上手かどうかは別として、箸ですしを食べていたのを記憶しています」
さらに、案内してもらったのは…
今田神父
「この部屋で歓迎会をして、ここでお食事をしました」
歓迎会では地元料理が出され、刺し身にも箸を伸ばしていたという。ローマ教皇庁の公式行事として長崎を訪れていた、レオ14世。
「隠れキリシタン」が身を隠していたとされる洞窟も訪れ、祈りをささげていたという。慣れないことにも積極的に関わり、交流を大切にする人だったという。
今田神父
「その人たちが大切にしているいろいろな文化、それを自分も大切にするというひとつの姿勢の表れなので、みんなうれしかったと思います」
レオ14世は、固有の文化を重んじていたという。新教皇として世界にどう影響を与えていくのか。
宗教と国際政治に詳しい専門家は…
日本大学 松本佐保教授
「改革派と保守派の間の非常にバランスが取れた人、という評価ができると思います」
「国際情勢がいま非常に不安定な状況になっているので、新しい教皇は『安定』ということをキーワードとして言っています」
「やはりそういうところがいま世界で求められている」
「ロシアとウクライナの戦争だったり、中東の情勢だったり、世界の紛争をどう仲介されるかを一番注目します」
*5月11日放送「真相報道バンキシャ!」より
最終更新日:2025年5月12日 10:03