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「死刑」情報公開進む米国、銃殺刑が議論に

2010年9月4日 18:48

 先週、千葉法相の指示の下、死刑を執行する刑場が初めて報道機関に公開された。一方、海外の先進国で唯一、死刑制度が続いているアメリカでは、刑の執行にメディアが立ち会うなど情報公開が進んでいる。

 アメリカ・ユタ州で今年6月、1件の死刑が執行され、全米に大きな議論を巻き起こした。西部開拓時代を彷彿(ほうふつ)とさせる銃殺刑が、全米で14年ぶりに執行されたのだ。

 刑を執行されたのは、ロニー・ガードナー死刑囚(当時49)。80年代に犯した2つの殺人事件で、85年に死刑判決を受けた。現在では薬物注射による死刑が一般的だが、当時のユタ州では死刑囚に銃殺刑を選ぶ権利が残されていて、ガードナー死刑囚は自ら銃殺刑を望んだ。

 州ごとに法律が異なるアメリカでは、50州のうち35州で現在も死刑制度が存続している。そのほとんどで、死刑囚が指定する親族、被害者の遺族、メディアが執行に立ち会うことができる。

 全米の注目を浴びた今回の銃殺刑には、9人の記者が立ち会った。目隠しをされたガードナー死刑囚は、真っ白な部屋に置かれた黒塗りのイスに体を固定され、正面の小窓から5人の射撃手が一斉に発砲して刑は執行された。イスの背後には生々しい銃弾の跡が残されている。

 NNNは、死刑執行に立ち会って取材した「AP通信」のジェニファー・ダブナー記者(47)に話を聞いた。ダブナー記者は「『最後に何か言い残すことはないか』と聞かれると、彼は『ない』と答えました。バンバンという銃声が聞こえました。一瞬の出来事でした」「胸につけられた的の布がよれたので、撃たれたとわかったんです。銃撃の瞬間、私たちが見た唯一の反応は、彼の左腕が動いたことでした。腕が上がって、まるで拳を握りしめているかのようでした。死刑執行の直前まで指を動かしていたのですが、暗い色の服だったので血が流れるのは見えませんでした。でも、服がぬれているのは見てわかりました」と話す。

 刑の執行には被害者の妻も立ち会った。妻は「彼は代償を支払わされた。すべてが終わって良かった」と話す。一方、ガードナー死刑囚の兄弟は「死刑制度には反対です。これは殺人。彼がやったことと同じだ」と話す。

 ダブナー記者は「死刑を取材することに、違和感を持つ人もいると思います。ただ、私は疑問を感じませんでした。死刑執行が法律の枠内で人道的に行われているかどうかを確かめるためにも、メディアは立ち会う必要があります」と話し、賛否が分かれる死刑制度の是非を考える上でも公開は重要だとしている。

 去年、52人の死刑を執行したアメリカ。その是非をめぐる議論は続いている。