ハイチで支援活動を続ける日本人女性に密着

22万人から30万人もの人が犠牲になったハイチの大地震から、1月12日でちょうど1年。正田千瑞子記者が、震災直後から現地で支援活動を続けている日本人女性に密着した。
ハイチの首都ポルトープランス。地震から1年たった今も、街中のいたるところにがれきの山が目立っている。シンボルの大統領宮殿も、壊れた姿のままだ。ハイチには、今も1000か所以上の避難民キャンプがあり、約81万人がテントで暮らしている。ゴミ捨て場のようになった川は、悪臭が立ちこめている。ハイチの大地震では、政府の高官の3分の1が死亡した。このため、首都機能がマヒ。ゴミ問題が深刻になっている。こうした中、コレラの感染がハイチ全土に広がっており、これまでに3700人以上が死亡した。
そんなハイチで奮闘を続ける日本人女性がいる。加藤奈保美(なおみ)さん、36歳。大学で建築を学んだ加藤さんは、3年前に勤めていた会社を辞め、災害支援を行うNGOに参加した。ハイチでの仕事は、被災地の人たちに水や衛生面での支援を行うこと。この日は、首都郊外の村を訪ねた。
村の入り口には、用水路から水をくむ女の子の姿が。同じ水路では、豚が水浴びをしている。村には水道が整備されておらず、住民はわき水を利用している。動物が水を飲んでいる脇で洗濯をしたり、飲み水をくんだりすることが、ひとつの場所でなされているのだ。加藤さんは、1つだけある整備された水源から水をくむよう呼びかけてきた。しかし、わき水を飲む人は後を絶たない。
衛生教育の不足もコレラの温床となっている。加藤さんは、「人々の行動を変えるには時間がかかるけれど、安全な水を飲むことの大切さと、清潔を保つことの大切さを教えている」と語る。加藤さんたちのNGOは、この場所にパイプを通し、蛇口からきれいな水を取れる給水設備を作る計画だ。
普段は自炊の加藤さんだが、町でお弁当を買うのも楽しみの1つ。ご飯に豆が入ったハイチ料理でお昼休み。加藤さんが、ホッとするひとときだ。
翌日、加藤さんは避難民キャンプを訪ねた。加藤さんのNGOは、子どもたちに石けんで手を洗うことの大切さを教えている。「コレラにかかりたくないから手を洗います」という女の子。子どもたちは加藤さんの前で、手を洗わない子がコレラにかかったという即興劇を披露した。教育の成果は、少しずつ浸透しているようだ。
加藤さんは、災害支援活動に参加した理由について「大学1年の時に体験した阪神・淡路大震災でのボランティアがきっかけ」と語る。「災害にかかわっていくというのが、私のライフワークだと思うようになりました。ハイチが変わっていくところを見たいと思います」と、笑顔を見せる。そんな加藤さんの目標は、あの村に給水設備を作ること。この日、ようやく見取り図ができあがった。今は、実際に建設が可能かどうか、許可を政府から取るために申請を待っているところ。計画が一歩、前進だ。
災害支援がライフワークだと言う加藤さん。笑顔の裏に強い意志を秘めている。加藤さんのハイチでの活動は、これからも続いていく。