欧米が軍事作戦、カダフィ大佐は徹底抗戦
反政府勢力への攻撃を強めるリビアのカダフィ政権に対し、欧米各国は19日、03年のイラク戦争以来となる共同軍事作戦を開始した。しかし、カダフィ大佐は徹底抗戦の構え。
欧米各国は、戦闘機でカダフィ軍の戦車を空爆し、地中海に展開する艦船から巡航ミサイル110発以上を発射した。20日には、フランス軍が空母をリビア近海に派遣するなど、さらなる攻撃の準備を進めている。
これに対し、リビア政府側は「子供や女性ら40人以上が死亡した」と主張し、テレビでケガ人が搬送された病院の映像を繰り返し流している。カダフィ大佐は「十字軍がイスラム教徒をせん滅しようとしている」として、アフリカやアラブ諸国のイスラム教徒に義勇兵として参戦するよう呼びかけた。また、「国民に対して武器庫を開放する」と述べ、一般市民も戦闘に動員しようとしている。
欧米が軍事作戦を急いだ背景には、カダフィ政権が反政府勢力の拠点・ベンガジへの侵攻を始めたことがある。国連は、政府側の空爆を阻止するため、飛行禁止区域の設置を盛り込んだ追加制裁決議を急きょ採択し、軍事作戦の環境が整った。この流れを主導したのがフランスとイギリスだった。フランスは、サルコジ大統領の会見の2時間後にはリビアに空爆を行い、イギリスも即座に後に続いた。フランスとイギリスが軍事作戦を主導する背景には、リビアがさらに混乱すればヨーロッパに大量に難民が押し寄せるなどの事情に加え、石油利権なども絡んでいるとの指摘もある。
一方で、アフガニスタンなどで戦闘を続けているアメリカは、イスラム世界で反米感情が高まることを警戒し、中東へのさらなる軍事介入は避けたいというのが本音だ。
カダフィ政権側は20日も、中部・ミスラタで反政府側に激しい攻撃を加えている。
各国とも、今のところ地上部隊を派遣する考えはないとしているが、カダフィ政権が最後まで抵抗した場合、戦闘が長引くおそれもある。