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アメリカ、美しい“桜”に囲まれる町

2011年4月13日 16:27
アメリカ、美しい“桜”に囲まれる町

 ワシントンの春の風物詩といえば、日本と同じく“桜”。住民達が80年以上に渡り、あるルールを守り続け、毎年美しい桜に囲まれる町を、ワシントン支局・平野亜由子記者が取材した。

 3月末から4月上旬にかけ、ワシントンでは、日本より一足早く桜が満開となった。1912年に友好の証しとして日本から贈られた桜は、今ではすっかりワシントンの“春の顔”。毎年、この時期には桜祭りが開かれている。

 今年の桜祭りでは、東日本大震災の被災地への支援が呼びかけられた。桜祭りを訪れた人々は、「全てがうまくいくことを心から祈っています」「日本はすぐに復興するでしょう。桜はアメリカへの素晴らしい贈り物です」と、日本へエールを送る。

 日本人に負けないくらい桜に愛着のあるワシントンの人たち。その愛着の深さを象徴する場所がワシントン郊外の住宅地・ケンウッドにある。ここでは、一軒につき1本以上の桜を植えないといけないことになっており、住宅地一帯が満開の桜に包まれる。ケンウッドで、最初の桜の木が植えられたのは1929年。以来、一軒につき1本以上の桜を植えることが住民の間での取り決めとなった。

 元町内会長のテッド・ベバリーさんは、ケンウッドに桜が植えられることになった歴史をこう説明する。

 「このあたりの土地を買った土地開発業者の1人が、造園技師でもあり、彼が桜を植えようというアイデアを思いついた。近くの町に植えられた桜が美しく咲いたので、ケンウッドの土壌も気候も桜を植えるのに適していると判断した」

 ケンウッドの住民たちは、これを忠実に守り、今では約3000本の桜が町を彩り、毎年この季節には、約3万人が訪れるという。

 そのケンウッドの町に、60年以上も暮らしているというルースアン・ウェーバーさん。95歳となった今も、桜の季節には子供たちの家族や近所の人たちを招き、食事会などを開いているという。ウェーバーさんは、「初めてここに来たときは本当に感動したわよ。私が愛している桜が咲いているのが信じられなかった。桜を見に来た人が楽しんでいるのを見るのはうれしいし、桜があるのはとても幸運なこと」と、当時をふり返りながら語ってくれた。

 ウェーバーさんがケンウッドに移住したのは第二次世界大戦中の1943年。日本の象徴ともいえる桜は、アメリカにとっていわば“敵国の花”だったが、住民たちが桜を傷つけるようなことはなかったという。第二次大戦中、アメリカ軍で働いていたというウェーバーさんに「桜は日本の象徴のような存在。当時は、複雑な気持ちだったのでは?」と尋ねると、「いいえ全く!少しもそんなことはない!」と、桜への愛情に変わりはなかったと断言する。続けてウェーバーさんは、「毎年桜の花が咲くときには、近所の人たちと一緒に食事会などしています。桜は人々の絆(きずな)を深めるのに重要な役割と果たしていると思います」と、思いを語ってくれた。

 80年以上に渡り、明るい年も、暗い年も美しい花を咲かせ、住民たちの絆を深めてきたケンウッドの桜。住民からは、こんな声も聞くことができた。

 「どんなに暗い冬の後でも必ず桜は咲く。日本にも必ず明るい春がやってきます」