中東で人気の「ある日本文化」とは?

中東で最大規模のイベント「ジャナドリア祭」。その会場で、日本から出展したあるモノが若者たちの注目を集めていた。その様子を富田徹記者が取材した。
中東の産油国、サウジアラビア。日本はサウジアラビアから原油を輸入し、車など工業製品を輸出、こうした関係が数十年にわたって続いてきた。しかし最近、その関係に変化の兆しが表れている。
4月、首都リヤドで「ジャナドリア祭」と呼ばれる展覧会が開催された。中東で最大規模と言われる、アラブの伝統を紹介するこのイベントに日本が招待を受け、パビリオンを出すことになった。中でも現地の若者たちが足を止めたのが、漫画やアニメなどを紹介するコーナー。そこに来ていた若者に日本の漫画の中で何が好きなのか聞くと、「ワンピース、ナルト、ドラゴンボール」だと答えてくれた。実はサウジアラビアの若者たちはかなりのアニメ通。しかし、この国で日本のアニメが放送されたり漫画が売られたりしているわけではない。「漫画は読んだことがないな。いつもアニメ。ラップトップPCでダウンロードして見ている」と先ほどの若者が教えてくれた。サウジアラビアの若者たちは、インターネットを駆使して日本のアニメを見ているという。
日本の漫画がサウジアラビアで絶大な人気を誇るにもかかわらず、商品が売られていない理由を、今回の展示を担当した寺田さんに聞いてみた。そこには中東特有の理由があった。「事前の検閲とかありますし、なかなか難しい問題がある」…サウジアラビアで書籍などを売るには、その内容がイスラム教の教えを逸脱していないかどうかの当局の厳しいチェックを受ける必要があるのだ。
イスラム教の聖地・メッカを抱えるサウジアラビアは、中東各国の中でもその戒律を最も厳格に守っている国だ。今回、開かれたジャナドリア祭も、会場は男女が完全に区別され、男性のほうの会場の様子は、まるで“男祭り”と称してもいいぐらいだ。
例えば、市内のショッピングモールでは、フードコートの座席やファストフードの注文カウンターまで男女別に分けられている。もちろん、売られている商品の内容にも規制がかかっている。そういった中で珍しい店をみつけた。店内には日本のゲームがずらりと並んでいる。これらの大半は日本から直接輸入されたものではなく、他国を経由してきたものだ。その分、値段は割り増しになるが、それでもよく売れているという。
そういった流れを受けてなのか、最近、日本のアニメやゲームの制作会社がサウジアラビアに進出するといった、文化や宗教の違いを乗り越えてビジネスチャンスをものにしようという動きが出ている。
日本を代表するアニメや漫画、ゲーム文化が、人々からの熱いラブコールに応えられる日が近づいているのかもしれない。