福島第一と同型炉 米原発の事故防止対策は
深刻な状態が続く福島第一原子力発電所と同じ型の原子炉を使い、約40年稼働している発電所がアメリカ・アラバマ州にある。そこでは、災害や事故を防ぐためにどのような対策がとられているのか。正田千瑞子記者がその原発を取材した。
アラバマ州にあるブラウンズフェリー原発は、福島第一原発と同じ「ゼネラル・エレクトリック(GE)」製の「MARK-1」型の原子炉が3基ある、古い原発。厳重な警備が敷かれた原子炉建屋の中は管が入り組み、複雑な構造となっている。
ブラウンズフェリー原発があるアラバマ州などの一帯は竜巻の多発地帯。先月26~27日には312の竜巻が発生し、送電線が被害を受けて外部の電源が途絶えた。しかし、バックアップ電源が作動し、自動停止と原子炉の冷却に成功した。実は、テネシー川のすぐそばにあるため、非常用の電源設備は水害を想定して設計されていたのだ。非常用のディーゼル発電機は川から離れた小高い場所に置かれ、その建物は防水設計で洪水や竜巻が来ても浸水しない構造となっている。
津波で電源が失われて原子炉の冷却が止まり、事故につながった福島第一原発では、非常用発電機が原子炉建屋より海側の建物の1階と地下に置かれていたことで津波の直撃を受けることとなり、重大な事態を招いた。
ブラウンズフェリー原発では電源喪失に対する数々の対策がとられているが、備えはまだ不十分だという。同原発のレイ・ゴールデン氏は「福島第一原発の事故を受け、安全対策を全て見直す必要を感じています」と話す。福島第一原発の事故後は早速、衛星電話を大量購入するなど対策に着手した。
一方、原発の周辺に住む市民からは「私たちの家は原発からとても近く、避難命令が出る頃には被ばくしているかも」と心配する声も聞かれた。
事故が起きた場合に情報を集約して避難指示を出すのが、原発から16キロ離れた場所にある危機管理局。放射線を防ぐため、同局の壁は厚さ30センチのコンクリート製で、原発とのホットラインを持ち、事故は起きうるとの前提で対策をとっている。周辺の住民には避難ルートが載ったカレンダーが配布されている他、原発から16キロ圏内の避難指示区域には、避難する方向を示す標識が至る所に立てられている。それでも、危機管理局のリタ・ホワイト所長は「福島第一原発の事故を受け、我々の基準も変えるかもしれません。避難範囲の見直しの可能性もありますね」と話し、危機感を新たにしている。
アメリカの原発政策をも揺るがす今回の事態。安全をどう確保するのか、見直しが迫られている。