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教育で救え-テロリストになる若者たち-

2011年9月28日 15:17
教育で救え-テロリストになる若者たち-

 2011年9月、あの同時多発テロ事件から10年の節目を迎えた。いま、アメリカで育った普通の若者が、テロリストになっていることが社会問題となっている。こうした若者を救おうとするある街の取り組みを、ニューヨーク支局・土屋拓記者が取材した。

 アメリカ中部・ミネソタ州。通りを歩く人たちは、イスラム教徒の服装を身にまとっている。毎週金曜日には、モスクでの集団礼拝を行う。この地域で暮らすのは、東アフリカの国“ソマリア”からの難民がほとんどだ。近くにあるマーケットを訪ねてみると、色鮮やかなスカーフやじゅうたんが売られていた。地元の人はここを“リトル・ソマリア”と呼んでいる。この街で3年前、信じられない出来事が起こった。20人以上の若者が突然姿を消したのである。若者たちが向かった先は祖国のソマリア。ミネソタ州で暮らしていた彼らは、イスラム系テロ組織に参加したのだ。テロリストになったいま、FBI、連邦捜査局から指名手配されている。「彼らがソマリアに行ってしまうのは驚きでした」-消えた若者たちを知るアブディ・イブラハムさんはそう語る。彼はいま、テロリストを生んだこの街でモスクを運営し、若者向けの教育プログラムを推し進めている。

 アブディさんがまず案内してくれたのは、小さな書店。『アメリカで暮らすイスラム教徒の子供たちに、正しい教えを伝えたい』という思いから立ち上げた書店だ。アブディさんは本を広げ、「こうしてお祈りの勉強をするんです」と、教えてくれた。

 「私たちが取り組んでいる課題は、第一に若者の中途退学問題とギャングです。子供たちが一度道を踏み外すと、元に戻るのは難しいのです」

アブディさんは、ソマリア系アメリカ人の若者が抱える問題は深刻だと言う。

 土曜日、中高生を中心に子供たちがモスクに集まってきた。アブディさんが毎週行う特別授業に参加するためだ。まずは、コーランの暗記。そして、この日は3年前のあの出来事も授業で教えていた。アブディさんは子供たちの前で、「学校に通って勉強し、仕事をして良い人生を歩むはずだった少年が、突然そうしたチャンスを投げ捨ててしまったんです。その結果、すべてが破たんしてしまうのです」と、語った。テロリストになった若者たちは、アメリカ社会になじめなかった疎外感に苦しんだと指摘されている。授業では、社会におけるコミュニケーションの取り方が議題となった。授業の中で、生徒たちはこう発言した。「自分の考え方と違う考え方を持つ人たちと、一緒に協力しあえることが大事だと思います」「誰かを助けようと思っても、その人が僕の足元を見て利用しようとした時はどうすればいいんですか?」-アブディさんは、授業を通じて社会に積極的に関わっていくことを学ばせていた。その願いはひとつだ。

 「若者がテロリストになるようなことは、誰もが認める過ちです。過ちが繰り返されることは世の中にはありますが、今後はもう起きないと思います」

 アメリカにあるテロリストを生んだ街、“リトル・ソマリア”。悲劇を繰り返さないための地道な活動は、これからも続けられていく。