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日本企業が中国のエリート学生を積極採用

2011年11月23日 16:16
日本企業が中国のエリート学生を積極採用

 GDP(=国内総生産)世界2位の経済大国へと上りつめた中国。その活力を取り込みながら成長しようとする日本の企業は、いま中国人のエリート学生を積極的に活用しようとしている。その企業の動きを中国・北京支局の勝田真司記者が取材した。

 北京郊外の自動車販売店。日本の大手商社・豊田通商が、中国企業との合弁で経営している。販売会社の社長のテキ・チュウさんは、豊田通商が8年前に北京で社員として採用した。3年前には社長に抜てきされ経営を任されている。

 人材活用は即戦力にとどまらない。地味なスーツ姿の若者たちは、来年卒業を迎える中国の一流大学に通う大学生だ。彼らが参加するのはリクルートが去年から始めた日本企業の採用面接会。今回は44社が日本から人事担当者が中国を訪れ、中国人学生の採用面接を行っている。条件は「日本での本社採用」だ。

 豊田通商の面接が始まった。北京第二外国語大学・日本語学科4年の黄河さんは「海外で働くのは大変だと思いますが、人間とはこのような厳しい環境を乗り越えれば自分も強くなれるし、もっと成長していけると思いますから、日本で仕事をしたい」と思いを語った。この日は、最終面接に残す学生を選ぶという。豊田通商人事部グループリーダーの山本さんは「グローバル人材がポイントになってきているので、中国だけでなく日本に来て世界に向いて、どう活躍するかをイメージしながら見ています」と、語る。

 翌日、最終面接に挑む黄河さんの姿があった。予定の採用枠は2人、狭き門だ。面接が進むなか、意外な質問が飛び出した。豊田通商・中国総代表の近藤さんは「商売してほしいわけ、今から。商売はボールペンです。これをあなたに1万円で売ります。通訳の彼女にセールスしてください」という課題だ。1万円より高く売って利益を出すというテスト、柔軟性や発想力が試される。そして黄河さんのセールスが始まった。

 黄河さん「すごく力を入れて生産していますので1万2000円になっております。いかがでしょうか?」

 通訳の女性「1万2000円。ただのボールペンでしょ。どういう機能があるんですか?」

 黄河さん「例えばこちらに丸い物があるでしょ。夜になるとライトになります」

 通訳の女性「でも高いですね、1万2000円は」

 黄河さん「では割引きしましょう。1万1000円でどうでしょう」

 通訳の女性「ちょっと高いな、お金がないので8000円はどうでしょう?」

 黄河さん「こうしたらいかがでしょう。このボールペンを1万1000円で買っていただき、もし壊れたり、1か月後もう使いたくなくなったらお金を返しますから、いかがでしょうか?」

 面接会に今年参加した企業は去年の倍、内定は約150人に達する見通しだ。リクルート・海外法人COOの伊藤純一さんは「グローバル人材が必要であり、新卒で優秀な人を採ることが重要だと思っている企業が多い。この傾向はおそらく今後も続くと思う」と、語る。

 面接を終えて内定者の選考に入った。近藤さんは「日本と中国だけで終わりそうなら、あまり魅力を感じない。世界を駆けめぐる野心的なところを、みんなストレートに表現してきたなと思ったから、甲乙つけがたくなった」と、悩むなか2人を選んだ。担当者から黄河さんに「当社に入社していただきたいと決定しました」と、内定が告げられた。「期待しているからね。グローバル人材だからね」と、握手とともに採用者の思いが込められた言葉がかけられた。それに対し黄河さんは「がんばります。国際人目指して、ありがとうございます」と、応えた。日本企業が外国の人材を活用する動きが本格化している。