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NYで活躍する日本人女性アーティスト

2011年12月14日 15:57
NYで活躍する日本人女性アーティスト

 ニューヨークを舞台にアートの世界で活躍する2人の日本人女性がいる。そのもようをニューヨーク支局・正田千瑞子記者が取材した。

 マンハッタンにあるアトリエで、毎日、絵画の作成に取り組んでいる女性、KAORUKOさん。ニューヨークに移り住んで2年、初めての本格的な個展に向けて準備を進めていた。KAORUKOさんが描くのは若い女性の飾らない、ありのままの姿だ。自ら調合した絵の具を使い、髪の毛1本1本を丁寧に描き込んでいく。KAORUKOさんは「ウナギのタレみたいに自分専用の墨を作って髪を描いています。アクリル絵の具とちょっと墨を入れたり…」と、話す。

 KAORUKOさん、実はかつて日本の芸能界でアイドル歌手として活躍していた。しかし、病気をきっかけに子供のころから好きだった絵画に転向したという。好んで描くのは、女性の姿。アイドルだった自分が決して見せられなかった女性のありのままの日常を「本来の魅力」として描き出している。

 世界に挑戦したいという思いでやってきたニューヨーク。しかし、ここに来たことで日本文化の素晴らしさに改めて気づき、作風に「日本らしさ」を積極的に取り入れるようになった。使っているのは、京都から取り寄せたたくさんの型紙。明治・大正時代の浴衣の柄だ。KAORUKOさんはこれをシルクスクリーンにして背景などにいかしている。わずかなズレも許されない緻密(ちみつ)な作業だ。そして、東日本大震災も彼女を大きく揺さぶった。描いていた妊婦のお腹に、思わず日本地図を描き入れた。KAORUKOさんは「アメリカにいると日本が大丈夫かなあと純粋に心配で、これは彼女のおなかなんですけど、地球にみたてていて日本地図を描いています」と、絵に込められた思いを語る。

 そして、ついに個展開催の日がやってきた。2年間の思いが込められた12点の絵画。ギャラリーは新しいもの好きのニューヨーカーであふれていた。個展に来ていた人に話を聞いてみると「とても気に入りました。すごくきれいな女の人の面白いしぐさが描かれていますね」「絵画だけど、プリントしたみたいで興味深い作風だね」と、絵を見た感想を話す。思った以上の反響にKAORUKOさんも満面の笑顔だ。そしてKAORUKOさんは「言葉が通じなくても人の気持ちを動かせたことが幸せです」と、語った。

 同じころ、新しい映画作りに奔走する日本女性がいた。アメリカ在住23年の佐々木芽生(めぐみ)さん。これまではジャーナリストとし活躍してきた。4年前、つつましい生活の中でアート作品を買い集め、世界的な現代美術のコレクションを作り上げたアメリカ人夫妻の姿を映画化した「ハーブ&ドロシー」で、数々の賞を受賞した。映画を監督するのは、初めてだった。

 現在はその続編に取り組んでいるが、資金が足りない。そこで、新しい仕組み「キックスターター」というインターネットのサイトを通じて支援を呼びかけた。一般の人が応援したいアーティストを選び1ドルから寄付出来る仕組みだ。これにより、企業や裕福な個人だけでなく幅広く世界中から資金を集められるようになった。佐々木さんの目標額は5万5000ドル(日本円で約430万円)。この日は、多くのサポーターとレストランでカウントダウン・イベントが行われた。「スリー、ツー、ワン、ワー!」と、盛り上がる佐々木さんとイベント参加者たち、なんと、60日間で目標額を上回る資金、8万7331ドル(約680万円)を集めることが出来たのだ。

 佐々木さんは「ニューヨークはミニ宇宙みたいな感じなので、世界中から来ている人が特にアートや映画で活躍している。国籍も年齢も性別も一切関係なく、作品だけで評価してもらえたというのはニューヨークだなあと思いました」と語る。アート・コレクションのその後を描いた続編の来年公開を目指している。ニューヨークは、挑戦し続ける人たちに新たな刺激やチャンスを与えてくれる。そんな場所だといえるかもしれない。