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2012年9月6日 20:48

日本にも普及か 英の“ギャップイヤー”

日本にも普及か 英の“ギャップイヤー”
(c)NNN

 大学進学前などに社会経験をするための「ギャップイヤー」という制度がある。日本政府は人材育成計画の中間まとめを発表し、その中にギャップイヤーの普及を盛り込んだ。実はこれイギリスがモデルになっている。ロンドン支局・渡辺祐史記者が取材した。

 ロンドン郊外にある保険会社で働く現在19歳のニーブ・バックリーさん。去年7月に日本でいう「高校」を卒業し、この職場でインターンとして自動車保険のセールスや財務管理などを手伝っている。ニーブさんは「仕事をする中で許可を求めるべきことや、人と付き合う方法まで学んでいるわ。大学を出てから仕事を探すのとは大きな違いだと思う」と話す。高校卒業後、すぐに大学に入る道もあったが、入学を1年遅らせた。社会経験を積み、将来進みたい道を探すためだ。ニーブさんは「始めたばかりの頃は、相手と電話で人間関係を築くのも、すごく難しかったわ。それまで家で電話を取るときは、だいたい相手がわかっていたもの。知らない相手と話すことがこんなに大変だとは思っていなかったわ」と仕事を通して学んだことを語ってくれた。

 イギリスでは大学入学前や入学後にこうした社会経験を積む「ギャップイヤー」が進路の一つとして浸透している。どれぐらいの生徒が選択するのか、大学進学率98%というロンドン近郊の女子校を訪ねた。あるクラスでは半数以上の生徒が大学入学前に「ギャップイヤー」を選択するつもりだという。ギャップイヤーの期間にどんなことをしたいか聞いてみると「ボランティアをしたり世界中を旅したいわ」「クリスマスまでは働いて、1月から10週間南アフリカに行くの。帰ってきたらベネズエラにボランティアに行くわ」という声があがった。ジュリア・ハリントン校長は「子どもたちは大学に入る前に成長したいと考えているし、就職する前に普通の学校生活よりも、少しでも幅広い経験をしたいと思っている。(ギャップイヤーは)彼らにとってチャンスなのよ」と説明する。

 イギリスの政財界に多くの人材を輩出する名門・ケンブリッジ大学。特に工学系の学部では、職場経験が研究にもプラスになると考えていると入試を担当する教授はいう。しかし、ジェフ・パークス教授は「数学が最たる例だが、1年間勉強から離れることで、高いレベルにあるはずの解析力が失われると懸念されているんです」と不安を語る。さらに入学前にギャップイヤーを選択する学生の割合について「学科によって違うが、入学前の取得率は1割程度です」と教授から意外な答えが返ってきた。

 先に、ギャップイヤーを取るとしたのは実は学費が、年間300万円以上かかるという、裕福な家庭の子供が多い女子校。その学校ですら、経済的負担からギャップイヤーを選択しない生徒がいるのだ。ジュリア・ハリントン校長は「出費がかさむし1年かかる。実際のところ大学にいても、夏休みにいろんな経験を積もうと思えば積めるわね」と話す。この学校の卒業生でもあるニーブさん。ギャップイヤーを取ったほかの同級生が海外などに出かけるなか、ニーブさんは、証券会社や銀行、新聞社など約10社で働き、収入も得る道を選んだ。ニーブさんは「インターンでお金を稼いで、大学に通うためにためているの。友達と会うのもどこかへ行くのも自分で払えるわ。自分でお金を持って独り立ちできるのは良いことよ」と話す。イギリスでは大学生の半数以上が学費だけでなく生活費についても政府が提供するローンを組んでいる。学生のころから経済的な自立も求められるのだ。ニーブさんの母親のアイリーンさんは「ギャップイヤーを取る学生の中には、休みをダラダラ過ごし、子供に戻ったような人もいるのよ。一方で人生を前向きに生きるために過ごす人もいる。すべてはその人次第なのよね」と語る。

 就職の際に社会経験やスキルを重視されるため「ギャップイヤー」が普及するという一面もある。学生たちは1年間、単に自由を手にするだけでなく、将来を見据えた選択を迫られている。