独自取材…産科に攻撃も ガザ地区「最大の病院」に迫る危機【バンキシャ!】
攻撃を受けているパレスチナ自治区ガザ地区最大のシファ病院。イスラエル軍はここにイスラム組織ハマスの司令部があると主張し、本格的な攻撃が行われるかが焦点となっています。まさに、その病院で取材を続けるガザ地区出身のジャーナリストが、イスラエル軍が間近に迫る中、極限状態の病院内の様子をバンキシャ!に語ってくれました。(真相報道バンキシャ!)
10日、バンキシャ!が連絡をとったのは、市街戦まっただ中のガザ市で取材を続けるジャーナリスト。だが、約束の時間になっても、なかなかつながらない。時間をおいてかけ直す。すると、ようやくつながった。
相手は、ガザ地区出身のジャーナリストのモハマド・エルヘルさん、23歳。
──(バンキシャ!)今どこにいますか?
モハマド・エルヘルさん(23)
「今、シファ病院にいます。この病院はきのうの夜から攻撃を受けました。多くの死者と負傷者が出ています」
「病院の敷地内に落ちたんです。どこにも行き場のない罪のない市民が攻撃されました。病院にいれば安全かと思いましたが、イスラエル軍は攻撃してきました」
シファ病院の様子を見せてくれるという。カメラを切り替えると…そこは病院の中庭。
モハマド・エルヘルさん(23)
「ここに遺体があります」
奥には避難してきた多くの市民。たくさんのテントも並んでいた。
ガザ地区最大のシファ病院。ガザ市での戦闘が激化する中で、退避が難しい人たちが身を寄せていた。
そんな場所が攻撃された…。
毛布にくるまり休んでいた人々。突然の出来事に、逃げ惑う。建物に目を移すと、火の手があがっていた。
モハマド・エルヘルさん(23)
「けさもまた産科が攻撃されて、そのあと外来診療所まで攻撃されたんです」
シファ病院の地下に、イスラム組織ハマスの司令部があると主張しているイスラエル軍。ロイター通信によると、この頃、イスラエル軍の戦車は病院の1.2キロ以内へと迫っていた。イスラエル軍とハマスの攻防の最前線・シファ病院。この場所で今、何が起きているのか…。
■攻撃続くガザ あの病院でいま何が
相次ぐ攻撃で混乱する病院内の様子を医師が映像に記録していた。
医師
「イスラエル軍が病院を攻撃した後、ここにはケガ人が放置されています」
「ケガ人が多すぎて医療が追いついていません」
「医療関係者にもケガ人や死者、行方不明者がいます」
ガザ地区の地元当局は、シファ病院が10日、攻撃を受け13人が死亡したと発表。
「外来診療所まで攻撃された!」
「神様、なんでよ!」
一方のイスラエル軍は攻撃への関与を否定している。
市民は恐怖に包まれていた。モハマドさんを取材中、カメラに何かを訴えようとする男性が。
シファ病院敷地内・避難者
「産科が攻撃されました。国連などは何もしてくれない。いつ死ぬかわからない。解決方法を見つけてください」
モハマドさんが「『次に攻撃されるのは自分かも』とみんな思っています」と話していると、突然、大きな爆発音が…。
モハマド・エルヘルさん(23)
「今、モスクが攻撃されました。非常に危険な状況です」
モスクだという塔からは煙があがっていた。イスラエル軍の戦車からの攻撃だと、モハマドさんは話す。
モハマド・エルヘルさん(23)
「イスラエル軍の戦車は病院に迫っています。衝突の音が聞こえています。ここにいる人はみんなそれを知っています。でもどこに行けばいいのかわからないのです。安全な場所がないんです」
そして、この取材翌日の11日、イスラエル軍がシファ病院を完全に包囲したと、中東の衛星テレビ局「アルジャジーラ」が報じた。モハマドさんは無事なのか。バンキシャはすぐにコンタクトを試みた。
──今シファ病院にいますか?無事ですか?
約1時間半後、モハマドさんから以下の返信があった。
「病院は完全に包囲されている」
「奇跡的に逃げ出せた」
「わたしは今、別の場所にいる」
「病院では患者が死にかけている」
イスラエル軍はシファ病院の包囲を否定した上で、市民に対し病院から退避するよう呼びかけている。
脅かされる、民間人の命。シファ病院以外の医療機関も人道危機に陥っている。シファ病院からほど近い、クッズ病院。10日に撮影された映像には、真っ暗な部屋で懐中電灯の明かりを頼りに医師や看護師が患者の手当てをしている。パレスチナ赤新月社によると、イスラエル軍の戦車は病院から20メートルの場所まで迫っているという。
人道危機が深刻さを増すガザ地区北部。
イスラエル軍は市民に対し南部へ退避するよう呼びかけている。しかし、その南部でもあまりにも“厳しい現実”があった。医療支援などを行うNGOのスタッフが先月末に撮影した、ガザ地区南部にあるラファの避難所の映像。
NGOスタッフ
「避難所はこんな感じです。非人道的な状況です。電気、水、インターネット、何もありません」
木の板などで造られた小屋。自分たちで材料を集めて造ったこの小さな空間に、避難してきた人々が身を寄せていた。1人が小屋の中を案内してくれた。手前には寝床とみられる場所。奥には多くの荷物が積まれている。避難する時に持ち出してきたのだろうか。
避難所の片隅で男の子に出会った。ガザ地区北部から避難してきたという。
男の子
「空爆が続いていたからガザの北から避難した。やっとこの避難所にたどり着いたんだ」
──(NGOスタッフ)水や電気はある?食事はとれている?
男の子
「…(首をふる)」
──(NGOスタッフ)生活に必要なものがないの?
男の子
「うん」
避難者の女性は、食事がとれない子どもたちのためにパンを焼いているという。
避難者の女性
「わたしも子どもたちも普通の生活ができていません。小さな子どもが普通の生活を送れていないんです。普通の人間の生活がしたい」
(11月12日放送『真相報道バンキシャ!』より)