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「台湾統一」へ中国の“戦略” 砂漠にナゾの建物…意味するのは?【バンキシャ!】

2025年5月19日 9:37
「台湾統一」へ中国の“戦略” 砂漠にナゾの建物…意味するのは?【バンキシャ!】

中国国内のある場所を捉えた衛星画像に写る、砂漠の中に道路のようなものと謎の建造物や、海上に船のようなもの。これは一体、何を意味するのか。バンキシャ!が取材すると、“台湾統一”に向けた中国の戦略の一端も見えてきました。(真相報道バンキシャ!)

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“台湾統一”を掲げる、中国。

中国・習近平国家主席
「台湾は、中国の神聖なる領土だ」

その中国にのみこまれたくない台湾。頼清徳総統は20日で就任1年。3月には、“中国は敵対勢力だ”と、初めて断言した。

台湾・頼清徳総統
「中国は台湾にとって、境外の敵対勢力だ」

すると4月、中国は台湾周辺で2日にわたる大規模な軍事演習を実施。さらに、頼総統を寄生虫に見立て、火であぶるアニメを公開。最後は「攻め進む」という言葉で締めくくっていた。

中国と台湾で緊張が高まる中、バンキシャ!は、中国国内をとらえた2枚の衛星画像に注目。その画像をひもとくと、台湾統一を目指す“中国の戦略”が見えてきた。

まず注目したのは、中国の内モンゴル自治区だ。広大な砂漠の一角に、突然現れた“街”。道路が交差し、大小さまざまな建物も確認できる。

実はこれ、中国軍が台湾のあるエリアを再現した、いわば“レプリカ”とみられている。そのエリアとは。台湾の地図で探してみると、台北市内に道路の配置がそっくりなエリアを見つけた。このエリアには、いったい何があるのか。

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バンキシャ!は台北に向かった。まずは、中国が造った“レプリカ”の端にあたるとみられる場所。幼稚園やクリーニング店、さらに…豆乳の店と、台湾の伝統的な揚げパンが食べられる食堂も。生活感が色濃い地区だ。

しかし、中国が再現したとみられる道にさしかかると、雰囲気が一変する。

バンキシャ!
「周りも開けて雰囲気ががらっと変わった印象」

ここからは、中国が再現したとみられる道に沿って歩く。角を曲がると現れたのは、およそ25万平方メートルあるという広大な広場。観光客の姿も多い。さらに進むと、街並みに“ある特徴”が現れてきた。

「外交部」のほかにも、「司法院」や「法務部」といった行政機関などが多く立ち並ぶ。そして、中心部分にあったのは、「総統府」。“レプリカ”にも大きな建物が…。

「総統府」は、頼清徳総統が執務を行う、いわば“官邸”。1年前の就任式も行われた、台湾行政の中心地だ。そんな場所を中国は砂漠の中に再現したのか。

では、どれほと精巧に造られているのか。まず、中国が造った“レプリカ”の道の長さを測ってみると、およそ971メートル。実際の街は…。

バンキシャ!
「973m15cmという結果になりました」

差はおよそ2メートル。中国の“レプリカ”はほぼ実寸大だということがわかった。中国はこの精巧な“レプリカ”を、いったい何の目的で造ったのか。

台湾の防衛に詳しい鐘志東博士に話を聞いた。

台湾の政府系シンクタンク・国防安全研究院の鐘志東博士
「中国がこれを造った目的は、兵士に総統府周辺の道を覚えさせるためだと思います。総統府をおさえ、行政をマヒさせることをねらっている」

鐘氏によると、台湾統一を狙う中国がとりうる方法の1つが、台湾に上陸し総統の身柄をおさえること。それを実行に移す時、総統府まで迅速にたどり着けるよう、“レプリカ”で訓練している可能性があると指摘した。

実は中国軍はこれまでも、「総統府」を狙った訓練を行っているとされてきた。これは、10年前に中国の国営テレビが放送した軍の演習の様子だ。そこには総統府に似た建物が…。それが最近では建物だけではなく、周囲の道路も精巧に再現したとみられる。

では中国はどのようなルートで、侵入を図るとみられるのか。

台湾の政府系シンクタンク・国防安全研究院の鐘志東博士
「ここは大きな広場になっています」

「この周辺で唯一、空からパラシュート部隊を投入できる広さ」

「1つの軍団、約500人は入ることができるでしょう」

「その後は、総統府に続く中で1番広いこの道に集結すると思います」

「中国にとって総統府が重要な目的だということが、(この衛星画像で)改めて証明されました」

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衛星画像から浮かび上がる“中国の戦略”。次に注目したのは、中国・広東省の沖合に浮かぶ、「上川島」だ。島の南側に位置する港を見てみると…。

バンキシャ!
「船がたくさんありますね。漁船ですかね」

一見すると日本にもよくある漁港。この場所に、“台湾統一”を目指す中国にとってのカギがあるという。

私たちは上川島へ。衛星画像で見たあの港には、小さな船から大きな船まで様々な漁船が並んでいた。すぐ近くには海鮮を売る市場も。のどかな港町だ。

しかし、漁港を歩いていると、大型漁船の上にのどかとはほど遠い、“あるもの”を見つけた。

記者
「放水銃がとりつけられています」

大きな「放水銃」。漁船の先端に設置されていた。「放水銃」とは大量の水を勢いよく噴射する装置で、日本では海上保安庁が違法な船を取り締まる時などにも使う強力なものだ。

なぜ放水銃が…。船からおりてきた乗組員を直撃した。すると、漁船の乗組員は「これは私たちの漁船ですが、民兵船でもあるんです」と話す。

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民兵船とは、中国の“海上民兵”が乗り込む船のことだ。この“海上民兵”について、中国の安全保障に詳しい専門家は。

笹川平和財団・小原凡司上席フェロー
「海上民兵と言われる人たちは、地方あるいは中央(政府)の命令を受けて行動する。そして、その報酬を受け取る人たちです」

漁師でありながら、その実態は軍の訓練を受けた“民兵”なのだという。

これは中国の“海上民兵”をとらえたとされる映像だ。南シナ海の領有権をめぐり対立する、フィリピン当局の船が撮影した。“海上民兵”が乗ったとみられる船が、パトロールをしていたフィリピン当局の船に体当たり。撮影をしているのか、乗組員はスマートフォンを向けていた。

万が一、中国が台湾に侵攻する場合は、“海上民兵”に先陣を切らせる可能性があると、専門家は指摘する。

笹川平和財団・小原凡司上席フェロー
「(台湾侵攻の)最初の段階では、『民間の活動である』として、(海上民兵を使い)台湾の活動に様々な妨害をかけてくる」

バンキシャ!
「海上民兵にやらせるメリットは?」

笹川平和財団・小原凡司上席フェロー
「(侵攻のきっかけは)『中国共産党・中央政府が関与したものではない』と言うことができる」

「中国の最大のねらいは、アメリカに軍事介入させないこと。軍事攻撃だとは認められないというふうにすれば、アメリカが介入する口実・理由がなくなると考えていると思います」

(5月18日放送『真相報道バンキシャ!』より)

最終更新日:2025年5月19日 9:37