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2018年1月1日 2:49

習近平“新時代”の「大国外交」とは

2018年の中国外交はどうなるのか。「外交は内政の延長線上にある」といわれる中国にあって、去年の中国共産党大会ぬきに今後の外交を語ることはできない。

今回の党大会で習近平主席は、自らの指導理念を明記した党規約改正を皮切りに党中枢を側近で固める人事を断行。権力の一極集中を進め、毛沢東時代の反省にたつ集団指導体制を骨抜きにした。

また、抜てきされるか注目されていた50代の若手世代を最高指導部に入れず後継者を明確にしなかった。3期目も視野に長期政権に向けた布石ともいわれる。

中国共産党による統治の正統性よりも習主席の指導者としての正統性がより鮮明に打ち出された感がある党大会。習主席の権威にお墨付きを与える舞台装置になった大会といえよう。

習主席は、党大会の開幕日、3時間を超えるスピーチを行い「新時代」という言葉を30回以上も繰り返しながら自分の時代であることを訴えた。しかし「建国の父」の毛沢東、「改革開放」のトウ(「登」におおざと)小平に並ぶ特別な指導者としての偉業を習主席が成し遂げたわけではない。

経済成長の勢いが鈍り、様々な矛盾を抱える今の中国で歴史的な偉業を成し遂げるのは至難の業だ。そこで、習主席は、かねて外の世界へと目を向けてきた。

中華民族の復興を語りながら巨大経済圏構想「一帯一路」を掲げて中国の影響力を広げようとしてきた。国内の権力基盤を固めた党大会の開幕日、習主席は、満を持して中国のこの先の道筋を語った。

「社会主義現代化強国として今世紀半ばまでに世界をリードする大国になる」

中国は、今世紀半ばまでに共産党結党100年にあたる2021年、そして、建国100年にあたる2049年、重要な節目を2度迎える。こうした節目を意識しながら自らの主席の任期を遙かに超える長期的スパンの目標を設定。歴史に名を刻もうとする狙いが透ける。

■2018年の中国外交

外に目を向ける習主席が「2つの100年」という節目に向け本格始動する2018年、どのような外交の舵(かじ)取りを行うのか。去年10月の党大会の新指導部発足以降、中国の外交姿勢には修正が加えられた可能性が高い。

習政権以前にも兆候は現れていたがGDPが日本を超え世界2位に躍り出た2010年を機に中国は、ますます強気の外交を展開するようになった。

それが招いたのは、アメリカとの対立関係、韓国との関係悪化、対日関係の冷え込み、そしてASEANからの反発。覇権への警戒感が広がり中国は四面楚歌(そか)に陥った。

この状況を打破しようとするかのように新体制発足後、トランプ大統領の訪中で米中蜜月を最大限にアピール。直後のAPECでは南シナ海問題で軋轢(あつれき)のあったベトナムとの関係改善を強調。THAAD問題で経済面での報復措置をとっていた韓国とも関係正常化へ動いた。

■対米関係

直近の中国外交について外交に詳しい専門家は、「中国はこれまでの外交の反省にたち、しばらくは緩和の方向に向かう。最も避けたいのは中国への反発から周辺国全てがアメリカ寄りになり対中包囲網ができることだ」と指摘する。

さらに、「中国はアメリカを潜在的なライバルと見ているが、まだアメリカと向き合う力がないことは理解している。今は、共同の利益を追求していくはず」と分析した上で「ただ、将来はわからない」と付け足した。

時間をかけて布石を打ちながら周到に物事を進めるのが中国。去年末に南シナ海の人工島を捉えた米衛星写真からはレーダー施設などを整備し軍事拠点化を着実に進めている様子がうかがえる。

外交姿勢が一時的に軟化したとしても、その裏には中国の冷徹な長期戦略があることもおさえておかねばならない。将来、アメリカに向き合える力をつけたときにどんなカードを切るのか、2018年の対米外交では、まだ見えてこない可能性が高い。

■対日関係

こうしたなか、気になる日本との関係はどうなるのか。最近の中国側には日本との関係改善に踏み出したとみられる兆候がある。習主席の笑みも垣間見られた去年11月の日中首脳会談。そして、日本の財界訪中団をナンバー2の李克強首相が迎えた待遇。背景には、対日友好姿勢が国内で弱腰と批判される心配がないほど習主席の権力掌握が進んだことも影響しているとの見方もある。

こうした中国からの友好シグナルを好機と捉え、日本も習主席の看板政策「一帯一路」への協力の意向を表明し日中韓首脳会談の開催、そして、首脳の相互訪問への道筋をつけようと動いている。

北京大学国際関係学院の梁雲祥教授も「日本との関係は膠(こう)着状態が続いてはきたが今のところ新たな火種はない。関係改善の機運は続く」とする。しかし、一方で、日中間の深い溝を埋められるか予断は許さないと指摘する。

「中国と日本は、地域での主導権を争う関係にある。主権の問題、政府間の信頼関係、国民感情など構造的に解決が難しい問題が日中間には横たわっている。2018年に首脳往来が実現するかどうかはまだ不透明だ」

日本との関係改善に向けた動きは日中韓首脳会談の開催が分水嶺(れい)となろう。

■北朝鮮への対応

そして、今年も焦点となるのが北朝鮮への対応。かつてないほどの冷却状態にある中朝関係。習主席は北朝鮮に特使を派遣したが金正恩委員長との会談は実現しなかったとみられ、核開発をめぐるやり取りは聞こえてこなかった。

北朝鮮関係者は、「最後の一線は越えない、決裂まではしないという儀式だった」と意味合いを説く。そのいわば儀式の直後にも北朝鮮は、弾道ミサイルを発射。訪中した公明党の代表に汪洋副首相は、「中国と北朝鮮は今対立関係にある」と明らかにした。中国指導部メンバーが北朝鮮と対立していることを明かすのは異例といっていい。

国際関係に詳しい中国の専門家は、「中国にとって外交問題で一番悩ましいのが北朝鮮であることは間違いない」と断言する。そして、「韓国は戦争への危機感が薄いが中国は違う。北東部の部隊が増強されたこと、党傘下の新聞『吉林日報』に出た核兵器から身を守るための記事、これらは全て中国が戦争に備えて準備をしていることの証しだ」と指摘する。

ただ中国が、石油の輸出禁止という北朝鮮を崩壊させる恐れもある劇薬を使う可能性は低い。対話による平和的解決を主張しアメリカを牽(けん)制しながら水面下では武力行使に備えた様々なシナリオを吟味しているとみられる。