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2019年1月2日 0:26

“キャラバン”の真相 国境沿い再び混乱か

■「キャラバン」環境悪化で施設閉鎖 参加者は分散化

2018年10月以降、アメリカや中米諸国で注目された移民の大集団「キャラバン」。一時、メキシコには、1万2000人以上が流入し、中間選挙を控えたトランプ大統領が連日、「侵略者だ」などとやり玉にあげたことで、日本を含め多くの視線が注がれた。

2018年12月、アメリカ西部、カリフォルニア州と接するメキシコ、ティフアナにある「キャラバン」の収容施設を訪れた。施設に近づくと、鼻をつく、すえたにおいが漂う。すれ違う人々は、乾いたセキを繰り返していた。一時、約6000人が滞在していた収容施設は、衛生環境が極度に悪化し、肺炎が広がるなどしたため閉鎖。マスクをつけた当局の担当者が、泥にまみれた毛布などを片付ける様子が見られた。

施設の前の路上には、テントを張って野宿をする人々。子供たちから、何度も「食べ物ちょうだい」と声をかけられたり、大人からは、「金をくれ」と手を差し出された。当局は、衛生環境を改善するため、ティフアナ市内に新たな収容施設を開設。運営責任者などによれば、12月中旬の時点で施設の滞在者は、約2000人で、「キャラバン」の参加者は、アメリカに不法入国した人、メキシコで就労ビザの取得を目指す人、自発的に母国に戻った人、そして、行方不明になった人など分散化が進んでいた。

■「気に入らない人物は殺す」劣悪な治安サンペドロスラの現実

今回の「キャラバン」の第一陣が出発したのは、中米、ホンジュラス北部の街、サンペドロスラ。なぜ、祖国を捨ててまでアメリカを目指すのか、その理由を突き止めるため、サンペドロスラへと入った。地元の警察からは、「キャラバン」参加者の多くが暮らす貧困地域は治安が劣悪で、昼間でも1人で歩くのを避けるよう言われた。そうした地域は、殺人や誘拐など凶悪な犯罪を繰り返す集団、「ギャング」が支配しているのだ。

今回、「ギャング」の二大勢力のうち「18」と呼ばれる集団に属するメンバーと接触した。通りの行き止まりにあった民家。その裏庭に通され、しばらくすると、ラフな格好をした数人の若者が現れた。「18」のメンバーで、この地区を支配しているという。「カメラは向けるな」という情報提供者の言葉に従い、彼らの出方をうかがった。

私の目の前に座った10代とみられる男は、ズボンの腰のところに拳銃をさしていた。時折、不気味な笑みを浮かべる。こちらからの問いかけにはまともに答えようとせず、「近くに気に入らない人物がいたら殺す。支配地域は完全にコントロールできている」と話した。この地区には、警察すら入ってこないという。

「キャラバン」の参加者は、こうした「ギャング」から脅迫されて金を奪われるほか、仕事をするにもみかじめ料を取られるなど、貧困から脱することができず、祖国を離れていた。

移民の問題に取り組むホンジュラスの元国会議員、バルトロ・フエンテス氏は「国内の状況が改善されない限り、また新たにキャラバンが結成されることは間違いない」と指摘。近くアメリカへと向かう新たな集団が現れるのではないかとの情報があるという。実際、取材中、深夜のバスターミナルで、アメリカを目指すという複数の男性にも出会った。「キャラバン」の後を追うように、今なお「ギャング」の支配から抜け出そうとしている人々がいるのだ。

■板挟み…メキシコ政府の苦悩

「キャラバン」など移民対策に頭を抱えているのがメキシコ政府だ。ホンジュラスなど国の南側から押し寄せる移民。一方、北側は、アメリカ、トランプ大統領が不法移民に強硬な姿勢を貫く。このため、「キャラバン」で見られたように多くの移民がメキシコ国内に滞留してしまう状況が続いている。12月1日に就任したばかりのメキシコ、ロペスオブラドール大統領は、まず、南側に手を打った。ホンジュラスなど中米諸国や隣接するメキシコの南東部に対し、治安の改善や経済発展などを目的とした投資を行うと発表。50億ドルを投じて雇用の創出を図り、移民を抑制するという。ただ、プロジェクトの具体化はこれからで、いつ効果が得られるか、見通しは立っていない。

一方、北側のアメリカとの国境では、新たな苦悩が生じていた。トランプ政権は、メキシコから不法入国した中米諸国の移民らについて、移住を認めるかどうかの審査中は、メキシコ側に戻して待機させると発表した。これまでは、アメリカ国内で待機していたが、審査中に姿をくらまして不法滞在を続ける人々を問題視した対応だ。これにより、メキシコ側の国境の街が、アメリカから閉め出された移民らであふれかえる可能性がある。

ロペスオブラドール大統領は、「移民の保護、人権尊重の原則を維持する」として、一時的に受け入れる構えを見せているが、収容施設の確保など不透明なことが多い。南北、板挟みの状態のメキシコ政府。2019年、アメリカとメキシコの国境沿いは、「キャラバン」を上回るような混乱が生じる可能性を含んでいる。