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2019年1月2日 18:06

ユーロ導入20年~曲がり角のEU

2019年、EU(=ヨーロッパ連合)の単一通貨「ユーロ」が導入されてから20年を迎える。ヒト、モノ、カネの行き来を自由にすることで巨大市場をつくり、加盟各国の共存共栄を図るという、EUが掲げてきた理想は、皮肉にも節目の年、曲がり角にさしかかろうとしている。その先にあるのは加盟国がバラバラになり崩壊するEUの姿なのかもしれない。

その大きな要因は、これまでEUをけん引してきたドイツと、フランスのリーダーが、いずれも求心力の低下にあえいでいるという事実にある。

■EU盟主メルケルの「退場」

ドイツのメルケル首相は10月、自ら率いる与党が州議会選挙で連敗した責任をとって、党首を退いた。2021年の首相職の任期満了をもって、政界を完全に引退する考えも表明している。首相就任以来13年間、EUを主導し、民主主義や人権重視などEUの価値観を守り続けたメルケル首相。しかし、自らの信条に基づき、推し進めた寛容な移民政策が、自身の政治生命のアキレス腱となった。

メルケル政権与党の党勢の衰えに拍車をかけたのは、反難民の新興右派政党であるAfD(=ドイツのための選択肢)だ。増加する中東やアフリカなどからの移民に対する、ドイツ国民の警戒を支持につなげ、2017年の総選挙で国政に初進出し、一気に第3党に躍進したほか、ドイツ全州の地方議会で議席を獲得するなど、勢力を広げている。

■欧州で広がるポピュリズム

こうしたポピュリズム(=大衆迎合主義)は、ヨーロッパ各国で広がっている。

現在、イタリアやオーストリアでは、極右政党が連立政権に参加しているが、特にイタリアは、2019年の予算案で、国民に聞こえの良いバラマキ色の強い公約の実現を優先し、財政規律の順守を求めるEUのヨーロッパ委員会と対立。2018年内の制裁手続き入りは見送られたものの、財政危機が表面化すれば、金融不安がヨーロッパ全体に広がる恐れがあり、EUとの対立の火種がくすぶっている。

ハンガリーやポーランドでは、ポピュリズム政党が政権を握った。ポーランドでは、政権与党が裁判官人事への権限を拡大し、ハンガリーは、不法移民や難民への支援を犯罪として取り締まるなど強権的な政策を打ち出した。

こうした動きは言論の自由や司法の独立など、民主主義の根幹をなす価値を脅かしているなどとして、ヨーロッパ委員会から、警告を受ける事態となっている。

欧州のこれまでの価値観を揺るがす勢力の存在は、2019年に、さらなる台頭が懸念されている。

■窮地の仏マクロン政権は

ヨーロッパ主要国の中で、これまでポピュリズムの波にのみ込まれてこなかったフランスのマクロン政権も窮地に陥っている。

「私の言葉で国民を傷つけたかもしれない」

2018年末に吹き荒れた、政権に抗議するデモに対し、マクロン大統領は、自らの責任を認め、国民に謝罪した。もともと、デモは、政府が発表した燃料税の引き上げ方針に端を発したものだが、パリ中心部では、一部が暴徒化し、治安部隊との激しい衝突や、周辺の店への破壊活動などが繰り返された。シャンゼリゼ通り周辺の飲食店やホテルの売り上げは、例年に比べ半減するなど、年末の書き入れ時のフランス経済に深刻な打撃を与えた。マクロン大統領は、最低賃金の引き上げや、年金生活者への増税一部廃止など、低所得者への支援策を発表し、事態の沈静化を狙ったが、デモは政権そのものへの抗議に発展しその後も続いている。

デモ参加者の怒りの矛先は、「金持ち優遇」との批判がある、マクロン政権の政策に向けられているのだ。

マクロン大統領は、財政赤字を「GDP比3%以内」と規定するEU基準を達成するための予算削減を進める一方で、企業活動を支援するため、法人税の減税や、従業員を解雇しやすくする労働市場改革などに取り組んできた。その結果、雇用対策などが後回しにされ、フランスの失業率は、9%台で高止まりしている。しわ寄せを受ける低所得者や労働者らの不満が、反政府デモとなって噴き出した形だ。

年末のクリスマスシーズンに入り、反政府デモの規模は、大幅に縮小しているが、バカンスが明けた2019年も、抗議は継続するとの見方が強い。

さらに低所得者支援策で財政出動を余儀なくされたマクロン大統領は、財政赤字がEU基準を守れない可能性も出てきた。デモを収束させることもできず、大統領就任以来、最低の支持率にあえいでいる。極右勢力は、こうしたフランスの混乱に乗じ、勢力をさらに広げようと機会をうかがっているとの見方もある。

国外からは、極右として知られる、イタリアのサルビー二副首相や、ドイツの右派政党「AfD」のワイデル院内総務らがフランスでの反政府デモを支持すると表明。また、国内では、ルペン氏が率いる極右政党RN(=国民連合、元国民戦線)の支持率が上昇している。12月の世論調査で、2019年5月に実施されるEU・ヨーロッパ議会選挙の投票先として、RNと回答したのは24%と、マクロン政権の与党REM(=共和国前進)の19%を上回った。

ヨーロッパ議会選挙は、各加盟国に割り当てられた議席数について、国ごとに選挙が行われる。国政には直結しないものの、フランスでは、この選挙がマクロン政権の是非を問う国民投票の色彩を帯びつつあり、重要度を増している。極右政党が、国民の不満や怒りの受け皿になっている現状に対し、マクロン大統領が、ヨーロッパ議会選挙までに事態打開への道筋を示さなければ、厳しい結果を突きつけられることになる。

EUの統合深化をめざし、ユーロ圏の共通予算化やEU軍の創設など、様々な改革を提唱してきたマクロン大統領。しかし、フランス国内でポピュリズム勢力に足をすくわれ、マクロン大統領の政策推進力が低下すれば、EU改革は遠のきかねない。

EUの結束をつなぎとめてきた、ドイツとフランスのリーダーシップに不透明感が漂う中、世界を見渡せば、アメリカや中国、ロシアがし烈な覇権争いを繰り広げている。内外から押しよせる荒波を乗り越えるために、EUのかじ取り役を誰に託すのか。2019年は、ヨーロッパにとって、ターニングポイントとなる重要な1年になりそうだ。