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2019年1月2日 20:54

北朝鮮の非核化交渉の行方

「金正恩委員長の韓国訪問は金正日総書記の命日の12月17日以降の可能性」「金委員長はKTX(韓国の高速鉄道)に乗りたがっている」

2018年12月、韓国メディアは連日、金委員長のソウル訪問が間近に迫っているかのような記事を配信した。2018年9月に行われた南北首脳会談の共同宣言には「金委員長は近い時期にソウルを訪問する」と明記されたことに加え、文在寅大統領が訪問時期は年内である可能性を繰り返し言及したことで、誤報も含め報道合戦が過熱したのだ。

北朝鮮の最高指導者による初の訪韓という歴史的イベントに韓国側の期待はいや応なしに膨らんだが、結局、2018年に実現することはなかった。北朝鮮にすれば、金委員長のソウル訪問は最大のカードの一つ。南北融和をさらにアピールする機会にはなるが、アメリカとの交渉がこう着し、経済制裁の解除や朝鮮戦争の終戦宣言など具体的な成果が見込めない中、警備上のリスクを抱えてまでソウルを訪れるのは時期尚早と判断したのだろう。

そもそも、北朝鮮とアメリカの交渉はなぜ、こう着したのか?それは非核化の進め方をめぐる両者の溝が埋まっていないからだ。北朝鮮は2018年5月に豊渓里核実験場の閉鎖を宣言すると、9月には東倉里のミサイル発射施設の廃棄を約束。アメリカの「相応の措置」と引き換えに、核開発の象徴とも言える寧辺の核施設を永久的に廃棄する用意もあると言及した。それなのに、アメリカはこれに応じる措置を取っていないではないかと、北朝鮮は不満を強めているのだ。

一方のアメリカは、北朝鮮が行った措置は核兵器をこれ以上は増やさないという「未来の核」についてであり、既にある「現在の核」を廃棄するため、今ある核のリストや査察が必要だとしている。そして、「現在の核」をなくすという非核化が実現するまでは、経済制裁を維持する構えだ。

非核化の進め方をめぐる溝が埋まらない中、北朝鮮は2018年11月、外務省アメリカ研究所所長名の論文で、このままでは経済と核の開発を進める「並進路線」の復活もあり得るとアメリカをけん制。12月に入ってからもアメリカへの非難を続けている。これに対しアメリカは、非核化が実現する前に制裁は解除しないという原則的な立場を崩していない他、金委員長の最側近の一人とされる崔竜海副委員長を制裁対象に加えるなど、米朝間の駆け引きが続いている。

ただ、米朝の交渉・対話が途絶え、再び激しい対立局面に戻ると考えるのは早計だろう。2018年6月の米朝首脳会談以降、北朝鮮メディアからトランプ大統領個人の批判は姿を消した。今の北朝鮮にとって最大のテーマは経済発展であり、そのためにこそ、平和的な環境が必要というのが金委員長の立場だ。

一方のトランプ大統領も得意のツイッターで「金委員長と恋に落ちた」「次の首脳会談を楽しみにしている」などとコメント。米朝双方が激しい駆け引きは続けるとしても、対話の枠組みを壊す可能性は低いとみられる。

韓国外務省傘下の外交安保研究所は「米朝どちらとも2017年の対立局面よりは今の対話局面が良いと考えている。非核化交渉の停滞状況から突破口を見つけるために、2019年上半期に2度目の米朝首脳会談が開催されるだろう」と展望している。

では、2度目の会談では米朝間の利害が最も対立する「現在の核」についてどのような合意があり得るのか。隔たりを一気に埋めるのは難しいとしても、アメリカが主張する完全な非核化の一歩手前で両国のディールが成立する可能性はあるだろう。

想定されるシナリオの一つが、北朝鮮がアメリカにとって脅威となるICBM(=大陸弾道間ミサイル)を放棄する一方、アメリカが段階的な制裁解除を認めるというものだ。「現在の核」の扱いは先送りとなり、日本の安全保障上の問題解決にはつながらないが、北朝鮮とアメリカにすれば国内向けに成果をアピールすることができる。

金委員長、トランプ大統領とも、トップダウン型の指導者であり、側近の助言や周辺国の都合よりも、自らにとって今が好機だと判断すれば2度目の会談開催に向け決断を下すだろう。