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映画でも注目 次の教皇を選ぶ選挙「コンクラーベ」とは?

2025年4月21日 23:51
映画でも注目 次の教皇を選ぶ選挙「コンクラーベ」とは?
フランシスコ教皇(2023年3月29日 バチカン)

ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇の死去を受け、次の教皇を選ぶ選挙「コンクラーベ」が行われます。今、日本で公開されている映画『教皇選挙』は、今年3月のアカデミー賞で脚色賞を受賞し、注目されています。この映画の日本語版解説を担当した日本大学の松本佐保教授に、注目点などを聞きました。
(NNNロンドン支局 鈴木あづさ)

――新たなローマ教皇を選ぶ選挙「コンクラーベ」の意味は?

ラテン語で「コン」というのは「~と一緒」という意味で、「クラーベ」は鍵を意味する言葉です。つまり「コンクラーベ」とは「鍵とともに」という意味で、13世紀に次の教皇が3年間も決まらなかったことがあって、その時“鍵をかけた部屋に枢機卿たちを閉じ込めて決めさせた”というところから来ているようです。

――どこで、どういう風に行われる?

バチカンのシスティーナ礼拝堂で行われます。普段は「バチカン美術館」として一般公開されている場所で、ミケランジェロによるフレスコ画が有名です。天井画の『天地創造』と壁画の『最後の審判』をご覧になった方もいるのではないでしょうか。

「コンクラーベ」のシーンは有名な『ダ・ヴィンチ・コード』や続編の『天使と悪魔』でも出てきました。

選挙権は「枢機卿」と呼ばれる大司教や高位の聖職者およそ100人が持っています。彼らは各教区の責任者で、普段は信者に対してミサをおこなっていますが、コンクラーベともなるとラテンアメリカやアジア、アフリカなど世界中から集まってくるので、教皇死去からコンクラーベ開催までは通常1週間から10日かかります。

――どうなると決まる?

「投票総数の3分の2」を獲得しないと決まりません。1回目で決まることはまずなくて、何度も投票を繰り返しているうちに候補者が絞られてきます。投票は1日2回以上、行われることもあり、決まるまでずっと続きます。3日間やっても決まらない場合は、“祈りの日”を1日設けて、また再開します。

――被選挙者は?

互選なので、選挙権を持つ人と被選挙者は同じです。「80歳未満」という決まりができたのは2000年以降で、“1人の教皇が長く務めた方が安定につながる”として、年齢制限が設けられました。

――日本人もいる?

2人います。大阪の前田万葉大司教(76)と、東京の菊地功大司教(66)です。菊地大司教はカトリックのNGO活動、たとえば東日本大震災の被災者の援助活動などへの貢献がフランシスコ教皇から高く評価されていたため、有望視されている1人です。

――裏で根回しなどは…

もちろんあります。根回しや権謀術数みたいなものがたくさんあり、今、公開されている映画『教皇選挙』にも描かれています。この映画をバチカンはオフィシャルには認めていませんが、高位聖職者に聞くと「よくできていて、かなり事実を反映している」と言うんですけどね…。改革派と守旧派の対立などもあるので、改革派の中で票が割れないように食事の時間などに密談して、候補者を一本化する根回しが行われたりします。

また、「若い頃にスキャンダルがないか」などの調査も行われます。カトリックの高位聖職者は独身男性と決まっているので、隠し子がいないか、女性問題がないかなどを調べるのです。映画にも候補者の地元まで行ってウワサを調べたりする場面が描かれています。

――各投票の後、結果はシスティーナ礼拝堂の煙突から出る「煙」の色で示されるが、なぜか?

煙は、もともとは投票用紙を焼く煙で、中世の時代は唯一、外部との接触手段だったのです。「白い煙」なら教皇決定、「黒い煙」なら未決定と外部の人に知らせました。ただ、見分けがつきにくいということで、今は煙に色を強く出すものを入れて判別しやすくしていて、同時に鐘も鳴らすようになりました。

――今回の注目点は?

一時期はアジア系、特に「アジアのフランシスコ」というあだ名もあるフィリピンのルイス・アントニオ・タグレ枢機卿(67)が有望視されていたのですが、脱落したというウワサもあります。彼は福音宣教省長官という役職も務めています。

バチカンの中では「国務省」と「福音宣教省」が重要なのですが、国務長官にあたるイタリア人のパロリン氏も有望株です。国務長官というのはローマ教皇の次にエラい人、つまりナンバー2ですね。ただ、特に“この人”という候補者が見当たらないのが現状です。

――では今回、難航も?

そうですね。前回2013年の時は2日目、5回目の投票でフランシスコ教皇が選ばれました。その前のベネディクト16世の選挙が2005年に行われましたが、すでにその時、フランシスコ教皇も有力視されていたのです。ベネディクト16世が健康上の理由で生前退位したため、フランシスコ教皇がすんなり選ばれました。

過去12年間に「改革派」のフランシスコ教皇が任命した枢機卿が増えたことは確かですが、人数が増えたからといって改革派が選ばれるとは限りません。ですので、予断を許さない状況ですが、白い煙が上がれば、すぐに新しい教皇がバチカンのサンピエトロ大聖堂のバルコニーに姿を見せ、世界に向けてメッセージを送ることになるでしょう。

最終更新日:2025年4月22日 1:32