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2020年5月26日 19:33

「核なき世界」どこへ…米政権の危険な動き

「核なき世界」どこへ…米政権の危険な動き
(c)NNN

■■ワシントン支局長の“気になるコトバ”■■
~~「責任あるそぶりすら見せない」(5月16日)~~

先週2つの原稿を書いていて、ある初夏の強烈な記憶が蘇ってきた。

ちょうど4年前の5月27日。オバマ大統領が現職のアメリカ大統領として初めて被爆地・広島を訪れた。私は当時、首相官邸担当の記者として、そして日本プレスの代表取材者として、オバマ氏の演説を至近距離で聴く機会に恵まれた。「71年前の、雲一つない晴れ渡った朝、空から死が降ってきて、世界は一変した」と語り始めた、あの名演説だ。静謐(せいひつ)に包まれた、厳かな雰囲気の中での「核なき世界」への誓いは、取材していて身震いしたことを覚えている。

あれから4年。トランプ政権が軍縮と逆行する動きを見せている。

一つ目がオープンスカイズ(領空開放)条約からの離脱。文字通り領空を開いて、批准国の査察機を受け入れる条約で、軍拡を抑止する枠組みだが、これを脱退するという。そしてもう一つが、有力紙・ワシントンポストが伝えた核爆発を伴う核実験の再開検討。30年近く行われていないものだ。トランプ政権の安保担当の高官らが、中国やロシアをけん制する狙いから検討したという。4年前との政策の変わりように唖然とする。

オバマ氏はこのところ発信を強めている。16日には大学の「バーチャル卒業式」に祝辞を寄せ、「責任ある立場の人々が、責任あるそぶりすら見せていない」とトランプ政権のウイルス対応を公然と批判した。オバマ氏は大統領経験者として、これまで現職批判を避けてきた。だが、もう我慢ならないのだろう。

一方のトランプ大統領も、オバマ政権が自身の元側近の訴追を仕組んだとの陰謀論を「オバマゲート!」などとして盛んに攻撃している。

気になる話もある。ホワイトハウスで行われる伝統行事、「前任大統領の肖像画の除幕式」の開催メドが立っていないという。カーター政権以来、約40年間も続くこの伝統行事には、前任の大統領夫妻が招かれ、この日ばかりはと和やかな雰囲気で懇談するのが恒例だ。オバマ氏もブッシュ夫妻を、ブッシュ氏はクリントン夫妻を招き、その功績を振り返った。

そうした余裕さえないのか。ホワイトハウスの変わり果てた姿に寂しさを感じる。
(ワシントン支局長・矢岡亮一郎)