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2020年6月15日 18:51

「団結を」将軍が見せた米国の“復元力”

「団結を」将軍が見せた米国の“復元力”
(c)NNN

■■ワシントン支局長の“気になるコトバ”■■
~~「人種などの違いを乗り越えた、団結の模範」(6月13日)~~

ホワイトハウス前で炎と黒煙があがってから2週間。緊急に設置された高さ3メートルのフェンスも撤去され、首都中枢は日常を取り戻しつつある。

あの日の夜、現場を取材していて、人々の複雑な表情を見た。黒人差別への怒りだけではない。経済格差への不満、新型コロナで襲いかかる将来不安…心に積もった感情と、「非日常」の興奮とが入り交じり、平和的な訴えの中、一部の参加者は一瞬にして抑制の利かない暴徒に姿を変えた。新型コロナウイルスなどなかったかのように。

キング牧師が暗殺された1968年以来の規模に広がった歴史的な暴動は、トランプ大統領の“らしさ”も浮き彫りにした。鎮圧のため軍投入の構えを見せ、首都近郊に兵を集めた。トランプ流の“脅し”だったのかもしれないが、国民に「団結」を呼びかけるよりも、力でねじ伏せようとする強硬姿勢を鮮明にした。自国民と軍を対峙させる動きには、軍内部や退役した将軍たちからも強い不満が噴出した。

中でもマティス前国防長官の「団結は強さなり」と題した声明は、アメリカの「復元力」とも言うべき、毅然としたものだった。

「ドナルド・トランプは私の人生で初めて経験する、アメリカ国民を団結させようとしないどころか、そのそぶりさえ見せない大統領だ。その代わりに、私たちを分断しようとしている」「彼なしで団結できる」

トランプ政権の閣僚経験者が大統領を呼び捨てにしながら、ここまで痛烈に批判するのは異例のこと。政治と距離を置いてきた他の退役将軍たちも、ここぞとばかりに一斉に声をあげた。“イエスマン”のエスパー国防長官でさえ、更迭覚悟で軍投入を「支持しない」と表明した。これは軍とトランプ大統領の関係が一線を越えた、ということなのだろう。

トランプ大統領はこの週末、陸軍士官学校の卒業式で演説した。卒業生を「人種などの違いを乗り越えた、団結の模範」と讃えた。士官学校出身者を「奴隷制度という悪を根絶するため戦ってきた」とわざわざ人種問題と絡め、軍を持ち上げた。しかし、大統領の「国民の団結」への思いは、実のところ危ういものだろう。

「軍は国家に隷属するのであって、政府に隷属するのではない」
政軍関係には抑制的な一定の緊張感が求められる。今回、トランプ大統領がこれを逸脱しかけたところで、退役将軍たちは猛烈なエネルギーで巻き返した。この「復元力」がトランプ政権下でもまだ働くところ、さすがアメリカと思わざるを得ない。
(ワシントン支局長・矢岡亮一郎)