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2020年10月23日 22:49

監視小屋に黒マスク兵 中朝国境コロナ厳戒

監視小屋に黒マスク兵 中朝国境コロナ厳戒
(c)NNN

新型コロナウイルス対策で国境を封鎖した北朝鮮。情報が限られる中、この国は今、何に直面しているのか。10月に金正恩委員長が行った演説からは、2つの側面が見える。


■演説に見えた2つの「闘争」

10月10日、金委員長は演説で「(新型コロナ感染ゼロの)世界が驚かざるを得ない今日のこの勝利は、わが人民自らがもたらした偉大な勝利」と発言。新型コロナの流入を断固阻止しているとアピールする一方で、「いま残っている問題は、わが人民がこれ以上苦労をせず裕福で文明的な生活を思う存分享受できるようにすることだ」と痛んだ経済の回復にも言及した。

厳しい国境封鎖と経済の再生、その折り合いをどう付けようとしているのか?中国と北朝鮮の国境の町を取材すると、その実像を垣間見ることができた。


■中朝国境は…コロナ厳戒

北朝鮮と接する中国・遼寧省の丹東。中国人観光客に人気の遊覧船からは、川向こうの北朝鮮の様子を間近に見ることができる。目立ったのは兵士たち。軍からの支給品なのか、多くの兵士たちが黒いマスクをつけていた。国境警備の兵士には感染対策が徹底されているようだった。

毎日対岸を見てきたガイドの女性は、ここ数か月で監視小屋も急増したと話す。「元々は臨時の監視小屋はこれほど多くなかった。現在は約100メートルおきで設置されている」。女性によると、監視小屋は中国で新型コロナの感染拡大が明らかになった後、一気に増えた。また、岸辺に沿ってフェンスも増設されたという。“感染者ゼロ”を主張する北朝鮮は、国境の監視体制を徹底強化していた。北朝鮮が人の移動を厳しく制限した結果、物流も激減。北朝鮮と取引する業者が集まる一帯では、平日にもかかわらず人通りが絶え“シャッター街”になっていた。また土産物店では、店員が北朝鮮産のはちみつを手に「全部、去年のもの。今年のものは入っていない」と話した。

中国政府の統計によると、国境が封鎖された1月以降、中国と北朝鮮の貿易総額は7割近く落ち込んでいる。


■「コロナで戻れず…」制裁破りか?

ただ、市内を歩くともう一つの顔も見えた。2019年12月、国連制裁で北朝鮮労働者を本国へ送り返すよう義務づけられた後、店を閉めていた北朝鮮レストランが営業を再開。女性スタッフたちがステージで北朝鮮の歌や踊りを披露していた。北朝鮮から来た女性スタッフに「制裁で帰国したはずでは」と聞くと、「今は帰らなくても大丈夫だ」と答えた。北朝鮮レストランでは新型コロナによる中朝の国境封鎖を理由に、北朝鮮に戻らず居残って働く人も多いという。

また、中国企業の工場でも北朝鮮の労働者の姿が見られた。警備員の中国人男性に聞くと、「新型コロナが理由で帰れないそうだ」と話した。同じく北朝鮮からとみられる女性たちが働く他の工場に並べられた製品の包装をみると「防護服」と書かれていた。インターネット上で同商品には、海外への輸出用との記載が。中国の医療品の輸出は、新型コロナの感染拡大で急成長。北朝鮮の安い労働力の確保と中国からの外貨の獲得、双方のニーズが合致したのか。中国当局も黙認しているのか、制裁措置の遵守は緩み始めたように見える。


■朝鮮戦争“血の絆”再び…

9月19日、中国と北朝鮮の絆を象徴するイベントも開かれた。70年前、中国と北朝鮮が共にアメリカと戦った朝鮮戦争を記念する展示館がリニューアルオープン。式典には中国と北朝鮮の関係者も出席した。朝鮮戦争でアメリカと戦って共に血を流したという中朝の「絆」を再確認する気運が高められている。

米中対立が続く中、アメリカに対抗するカードを増やしたい中国と経済の苦境を脱したい北朝鮮、今後、さらに経済的な結びつきを強める可能性もありそうだ。