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2020年11月10日 13:00

タイの新世代デモ SNS駆使し当局を…

タイの新世代デモ SNS駆使し当局を…
(c)NNN

タイで大学生が主導し、大規模化している反政府デモ。現在のプラユット政権の退陣のみならず、これまでタブーとされてきた王室改革も要求し続けていて、当局はデモに参加した人々を厳しく取り締まろうとしている。

しかし、学生らは香港の民主化運動を手本に、SNSを駆使してゲリラ的にデモを展開し、当局を翻弄して活動を続けている。

一方で、デモの主体が“SNS世代”であることから、デモ隊に反対する意見に対してSNS上で非難が集中し、「炎上」する事態も起きている。

(NNNバンコク支局 森 鮎子)

■SNSを活用し、当局の取り締まりを逃れる若者たち

2020年10月21日。デモを主導する学生グループのフェイスブックのアカウントに、「全ての駅に午後3時に集合」との情報が投稿された。実際に3時にバンコク支局近くの駅に行ってみると、スマホとにらめっこする数十人の学生らの姿があった。

すると、フェイスブックの情報が「4時に戦勝記念塔の前でデモを行う」と更新された。学生らは、すぐに電車に乗って集合場所へと移動し、戦勝記念塔で反政府集会が始まった。

7月から始まった反政府デモは、当初、SNSで事前に開催時間と場所を告知して、参加者を集めていた。しかし、治安当局による取り締まりが厳しさを増すと、直前まで情報を伏せるようになった。

その上で、SNSの素早い情報拡散能力を生かして複数の場所にすぐに集まり、ゲリラ的にデモを行うようになった。いつ、どこで、どのようなデモが行われるか分からず、私たちメディアも翻弄される。

あるときには、「ビッグサプライズを用意しているから駅に集合」という情報がSNSで流れた。しかし現場でデモは行われず、「きょうは『何もしないこと』がサプライズ」との発表が投稿者からあり、学生たちは警戒態勢をとっていた警察を「だましてやった」と、したり顔だ。

人を食ったような展開にはあっけにとられるが、こうした若者ならではのやり方で、治安当局の取り締まりをかいくぐっているのだ。

■香港民主化運動をモデルに変化自在なデモ「#全員がリーダー」

デモを主導するグループは複数あり、ゆるやかに連携して同時多発的にデモを行っている。参考にしているのが、香港の民主化運動だ。

グループのリーダーたちが集会の場所などを決めるときに仲間との間で利用しているのは、「テレグラム」という通信アプリ。じつはこのアプリ、香港のデモ隊が使っていたものだ。投稿が暗号化され秘匿性が高く、当局の監視の目をかいくぐることができるためだ。

香港では去年から、政府や中国に対する抗議活動が行われている。若者たちは民主化を求めて、「水になれ」というスローガンのもと、水のようにかたちを変えながら臨機応変にデモを行った。タイの若者たちもこの動きを参考にして、SNSで情報を共有しながら、会場を急遽変更したり、当局から強制排除を受ける前に短時間で解散したりと流動性を持った動きをしている。

SNSでは「#全員がリーダーだ」という言葉が広がり、学生グループのリーダーが当局に拘束されても、すぐに別の若者がリーダーを担い臨機応変に対応する。当局は次々とリーダーの拘束を進めているが、「香港モデル」でダイナミックに動く若者たちの動きに対応しきれていない印象だ。

■批判的な意見に対し徹底攻撃!タイセレブの発言も炎上

デモがSNSを活用して広がる中、デモ隊に批判的な意見をした人がSNS上で攻撃を受け「炎上」する事態も起きている。

ある女性芸能人が、自身が司会を務める番組で「このデモは無意味だ」などと発言したところ、SNS上で批判が殺到。彼女の母親のアカウントまで荒らされてしまい、最終的に彼女は番組を降板させられる事態となった。

一方、タイの内政状況について何もコメントしない著名人は「なぜ国が直面する問題について考えないのか」などと批判され、発言してもしなくても炎上するケースが増えている。

一般の市民もSNS上で攻撃されることを恐れ、デモ隊に批判的な発言をしづらい状況だという。

自らの主義や主張に沿わない意見を排除しようとする若者たちの姿勢に対しては、「表現の自由を侵害している」などという批判の声も上がっていて、社会の分断がさらに深まることが危惧されている。