「戦争がもたらすもの」教皇が伝えた被爆地の写真 フランシスコ教皇が死去 広島・長崎でもスピーチ

ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇が21日、88歳で死去しました。2019年、ローマ教皇として38年ぶりに来日すると、広島・長崎で核廃絶を訴えるメッセージを発信。心を寄せ続けた背景には、被爆地で撮影された1枚の写真がありました。
2019年、フランシスコ教皇を被爆地・長崎と広島へと導いたのは、1枚の写真でした。米軍の従軍カメラマン、ジョー・オダネルさんが撮影した「焼き場に立つ少年」という写真です。
フランシスコ教皇
「幼い子どもの写真です。弟の亡きがらを背負って火葬場の前で順番を待っています。長崎で原爆が落とされた後のことです」
この写真をポストカードにして、全世界の教会に配っていたフランシスコ教皇。そのそばには「戦争がもたらすもの」いうメッセージを書き添えていました。
フランシスコ教皇
「この写真は、1000の言葉よりも、人の心を動かし得るものです」
この写真を撮影したジョー・オダネルさんの息子、タイグ・オダネルさんは、父親と同じカメラマン。タイグさんは、「焼き場に立つ少年」を撮影したときの様子を父から聞いていました。
タイグ・オダネルさん
「父が焼き場に近づき、若い男の子が緊迫して立ち、唇をかみしめているのを見ました。写真を撮ったあと、唇から血が出ていたそうです」
従軍カメラマンだった父は、葛藤と戦いながら、シャッターを切り続けたといいます。焼け野原となった長崎や広島で撮った写真は300枚。
ジョー・オダネルさんは生前、「(アメリカは)間違っていたと思った。おばあさん、おじいさん、子どもたちを殺してしまった。軍人は死んでいない。何もしていない人たちを殺してしまった」という肉声も残していました。
2019年11月、雨の降る長崎市の爆心地公園。7万4000人が原爆で亡くなったこの長崎から、「ここは、核兵器が人道的にも環境的にも、悲劇的な結末をもたらすことの証人である町です」と訴えました。その傍らにあったのは、「焼き場に立つ少年」の写真でした。
その場に駆けつけたタイグ・オダネルさんが「父の写真を使ってくださってありがとうございます」と伝えると、フランシスコ教皇からは「あなたのお父様はこの写真を通して平和のために大きな貢献をしました」との言葉がかえってきました。
タイグ・オダネルさん
「とても感動しました。一瞬の出来事でしたが、教皇様は私の目を見て話をしてくれて、とても誠実で謙虚な方でした」