葬式をせずに散骨だけ…中国が国を挙げて“葬式改革” 急速に進む高齢化社会
中国では4月4日から、日本のお盆にあたる祝日を迎えます。その中国では今、国を挙げて遺体を墓地に埋葬しない、「葬式改革」を進めています。その理由は─。
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中国・天津市の港に集まる、大勢の人々。手には花や黄色い袋を持っています。
柳沢高志記者・NNN天津
「政府が準備した船に遺族が乗船して、まもなく海への散骨が行われます」
これは、北京市や天津市などが主催する合同の海洋散骨式。火葬の後、葬式をせずに散骨だけするというものです。
参加した35歳の王さん。去年、1つ年下の妻(34)をがんで亡くしました。
王華溢さん(35)
「彼女に安心してほしいと伝えたい。子どもはちゃんと育てるからと」
散骨を選択したのは、家族3人とも海が好きで、妻の希望もあったためだといいます。
今回、参加した遺族は約150人。政府が用意した船で沖合へ出ると、順番に、海の中で溶ける特殊な袋に入れられた遺骨を海に流していきます。
王さんも…
王華溢さん(35)
「いつかは自然に戻るから墓地でも土葬でも(散骨と)結果は同じなんだと思います」
北京などで年々増加しているという海洋散骨。実は、海や山などへの散骨を選択した場合、葬儀の費用を全額、政府が負担します。そのワケは…。
北京市 散骨担当者
「国や北京市は海洋散骨を、土地を節約する葬式として重視しています」
中国政府は今年、“葬式改革”として、散骨などの自然葬を国を挙げて推し進める方針を打ち出しました。その背景にあるのが、土地不足です。
北京市郊外の国営墓地。狭いスペースに墓が並んでいます。1000万円以上するという墓も…。
高齢化が急速に進む中国では、1年間に亡くなる人の数は1100万人以上。一般的な埋葬方法だと、毎年約70平方キロメートル、東京ドーム1500個分の墓地が必要になるといいます。中国全土でその土地が不足し、墓の値段が高騰しているのです。
そこで推し進められているのが散骨などの自然葬です。生前に散骨を約束した70歳以上の住民に対し、亡くなるまで毎月2000円から8000円の奨励金を支給する自治体もあるといいます。
こうした政策の後押しもあり、増加しているという散骨。さらに、危機感を強めた政府が建設したのが、デジタル技術を駆使した納骨堂です。
デジタル納骨堂担当者
「名前と亡くなられた日、写真を表示することができます」
ロッカーのような部屋は、1つで2人分の遺骨を納めることができ、160万円から200万円だといいます。2年前に売り出しましたが、ほぼ売約済みで順番待ちの状態。
国家を挙げた“葬式改革”。高齢化が進む中国で急速に定着しつつあるようです。