【特集】統計上は"ゼロ"も相談は年間100件以上…実情は?ホームレスのいま
国の調査によりますと、県内では2015年を最後にホームレスは確認されていません。
しかし、秋田市のNPO法人、あきた結いネットには、住む場所が無いといった相談が後を絶たない状態が続いています。
実態を取材しました。
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秋田市桜のNPO法人、あきた結いネットが運営する施設です。
坂下美渉 代表
「こちらが家族用、女性用のシェルターになってます」
今年2月にできたのが、住む場所を失った女性専用の一時的な住居、シェルターです。
料金は、家賃と水道光熱費を合わせて、1日1800円。
保証人や初期費用は不要で、料金の支払いも利用者の事情に合わせて柔軟に対応しています。
利用できる期間は、最も長くて3か月です。
坂下 代表
「妊婦さんの段階で、出産後に利用したいという方もいらっしゃいましたし、お母さんとお子さん3人という組み合わせでの受け入れの時には、一番下のお子さんが0歳児という場合もありました」
10年前に法人を立ち上げ、様々な事情で住む場所を失った人たちの支援に取り組んできた坂下さん。
寄せられる相談は年間100件以上。
最近は、特に若い人が増えているといいます。
坂下 代表
「いままでだと、職を失った時、実家に帰ってちょっと休んでから再就職して自立してくパターンがあったんですけど、実家自体も生活的に余裕が無くて、息子。娘が帰って来ても受け入れられない状況が起きてしまっていますね」
住む場所を失う理由が多様化しているという近年。
同じ建物の2階には、誰でも利用できるシェルターもあります。
生活費のやりくりや就職活動の後押しなど、様々な支援を受けながら、安定した生活を目指すことができます。
1階にある厨房も、生活の再建に向けたステップアップの場のひとつです。
調理の様子は周りから見えるようになっていて、シェルターの利用者が職員と一緒に働くこともできます。
作られた弁当は、去年、秋田市を襲った記録的大雨で被害に遭った人たちにも無償で提供されました。
災害時の支援のほか、障害者の自立に向けた取り組みなど様々な活動を行っている、あきた結いネット。
しかし、住む場所を失った人たちへの支援活動に対し、行政からの補助は無く、企業や団体からの寄付金で賄っているのが実情です。
背景にあるのが、国の“ある統計”です。
坂下 代表
「数字がゼロであるというところと、民間で行えるぐらいの範囲の相談だという認識を持たれているのじゃないかと思っています」
厚生労働省が毎年1月に行っている、ホームレスの実態に関する全国調査。
県内では、2015年に2人確認されたのを最後に、ホームレスはいないことになっています。
坂下さんによりますと、統計上で数がゼロになっている以上、行政からの支援は受けられません。
一方で、住む場所が無いなどという相談は、あきた結いネットに寄せられ続けています。
寒さが厳しい冬場に調査が行われていることが、統計との隔たりの背景にあるとみられていて、坂下さんは実情に目を向けて欲しいと訴えます。
坂下 代表
「やっぱり本当のところを見ていただきたい。ゼロになってしまうと住まいを失ってしまった方たち“私たちはどこに助けを求めたらいいの?”ということになってしまうので、やはり実態をちゃんと把握していくこと。そしていま私たちは、活動費に関しては、地域の皆さんの善意に助けられているんですね。行政とより連携して資金的なところもより強化してやっていけると一番いいんですけども、いまは民間の善意に助けられているので、そこを大事にしながら事業を運営していけたらなと思っています」
統計上はいないことになっている、住む場所を失った人たち。
実態に即した調査と支援の充実が求められています。