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“思い出の一着”に新たな命…洋裁歴50年の職人の技 亡き父のコートをリメイク、35年前のモーニングも復活『every.気になる!』

2024年12月7日 12:53
“思い出の一着”に新たな命…洋裁歴50年の職人の技 亡き父のコートをリメイク、35年前のモーニングも復活『every.気になる!』

「よそではやれないものを直そう」と、どんな依頼も断らない洋服修理店が東京・目黒区にあります。亡き父の愛用したコートや35年前の礼服の再生など、さまざまな依頼が舞い込みます。家族をつなぐ思い出の一着をよみがえらせる、職人の仕事に密着しました。

■舞い込む依頼は年間1500着ほど

東京・目黒区に、どんな依頼も断らないという洋服修理の専門店「ファッションリフォーム&リメイク ミモレ」があります。舞い込む依頼は年間1500着ほどです。たとえ裏地がボロボロになったジャケットでも、きれいに直します。

50代の女性が、10年間愛用しているというダッフルコートを引き取りに来ました。ボタンの留め具部分がボロボロになってしまい、縫い変えてもらいました。このコートの修理費は1万2500円でした(費用は服の状態によって変わります)。

女性
「きれいに出来上がっています! 冬にむかってよく着るので、とても助かります!」

■客の相談に乗りながらお直しを提案

東京・自由が丘駅から徒歩5分。26年目を迎えた店では冬物の修理依頼が増え、繁忙期を迎えていました。店主の駒井美智子さん(73)は、客の相談に乗りながらお直しを提案します。

50代の客
「ファスナーかボタンに変えられない?」

駒井さん
「ミシン入れてもいいと思うわ」

50代女性
「ミシン入れてファスナーをつける?」

駒井さん
「そうそうそうそう」

洋裁歴50年以上の職人の元には、さまざまな修理依頼が日々舞い込みます。

■思い出の一着、直してまでなぜ?

都内に住む太田さん(74)は「自分のモーニングのウエストが入らないので…」と、35年前にオーダーメイドで仕立てたというスラックスを持ってきました。当時、お祝い事の時には必ず着ていた思い出の一着です。直してまではきたい理由は何なのでしょうか。

太田さん
「娘が結婚式をするので。これが最後の俺のモーニングかなと」

社交ダンサーの二女(30代)が来年1月に結婚式を挙げるため、思い出のモーニングで門出を祝いたいそうです。計測すると、広げるウエストは11cmでした。「タックで出せるから11cm出せます」と駒井さん。布が折り返してある部分を広げるといいます。

駒井さんはメジャーでサイズを確認すると、迷いなくハサミを入れていきます。「これだけ(広がりが)出ましたね」。1cm単位で調整し、ウエストが11cm広がりました。スラックスの修理費は9800円でした(費用は服の状態によって変わります)。

■「幸せになって」…娘への思い

依頼から1週間後、試着のために太田さんが来店しました。はくのは30年ぶりです。

駒井さん
「ちょっとゆるいかな?」

太田さん
「いや、こんなもん」

駒井さん
「それぐらいがいいね」

太田さんはウエストについて「いい感じ」と言います。思い出の一着がよみがえりました。

──娘さんも驚くんじゃないですか?

太田さん
「そうでしょうね。私のこの姿は見たことないと思いますね。2人がこれから幸せになってもらえればいいな、そういう気持ちで送り出せる父親になれればいいなと思っています」

■亡き父が20年間愛用していたコート

ボタン1つからオーダーメイドの一着まで、どんな依頼も断らないというミモレ。大切な人が残してくれた一着をリメイクしてほしいという人も、この店を頼ります。

「父の昔着ていたコートなんですけど、私も思い出があったので残したいと思って」。思い出の品を依頼したのは高谷さん(41)。父の宏俊さんが20年間愛用していましたが、2年前に病気で亡くなったといいます。

高谷さん
「父は170cmくらいで、自分が着るには肩幅が大きすぎたりとか、難しいかなと思ったんですけど…」

大幅なサイズ変更だったため難しかったという依頼。両袖を取り外すなどし、サイズを一回り小さくするイメージです。「両サイドで。袖幅・ワキ幅」と駒井さん。ロングコートの修理費は2万5000円でした(費用は服の状態によって変わります)。

■「うれしい」…洋服がつなぐ思い出

1週間かけ完成しました。袖を通した高谷さんは「合ってる! いい感じですね」「着ていた父を覚えているので、うれしいなと思います」と満足げです。

懐かしい記憶もあるといいます。「高校生の入学準備で学校に教科書とか買いに行く時、父がこれを着て一緒に来てくれた。お守りみたいな存在かもしれないですね」

家族の思い出を、洋服がつないでいます。

■駒井さん「喜んでいる顔がうれしい」

駒井さん
「よそではやれないものを直しましょう、というのがモットー。お客さんの喜んでいる顔を見ると本当にうれしいです。それでやってこられたんだと思います」

その思いをきょうもつないでいます。

(12月4日『news every.』より)

最終更新日:2024年12月7日 12:53