がん転移の新たな治療法につながるか 強心剤で抑制 富山大学の研究グループが仕組み解明
富山大学の研究グループが、心不全の治療に使用される「強心剤」にがん転移の原因となる細胞を封じ込める働きがあることを突き止めたと発表しました。富山大学はがん転移の新たな治療法の開発につながるとしています。
富山大学学術研究部医学系 藤井努教授
「がんの治療において大きな一歩の前進になる研究結果だと思っています」
きょう開かれた会見には、研究グループの富山大学附属病院の医師や医学部・薬学部の教授ら4人が出席しました。
研究グループが明らかにしたのは心不全の治療に用いられる強心剤の「ジゴキシン」にがんの転移を抑える働きがあることです。
がんの転移は、「血中循環がん細胞」と呼ばれる、元のがん組織から剥がれて血液中を移動するがん細胞が体内を巡って、ほかの組織に付着することで引き起こされます。
研究グループが、胃がん患者の細胞を調べたところ、「α3型ナトリウムポンプ」と呼ばれるタンパク質が、がんが発生した元の組織では細胞の内部に存在する一方で、「血中循環がん細胞」では細胞の表面に移動することを発見しました。
このタンパク質が「血中循環がん細胞」の体内移動に不可欠でがんの転移を促すことを突き止めたということです。
さらに、「ジゴキシン」を投与することで、このタンパク質が細胞の中から表面へ移動するのを阻止し、「血中循環がん細胞」を死滅させるとともに、ほかの臓器などへのがん転移を抑えることを確認しました。
富山大学学術研究部 薬学・和漢系(薬物生理学)藤井拓人 講師
「より新しいタイプの転移の抑制薬というものにつながるのではないかと考えて、今後も研究を続けていきたいと思います」
がんは40年以上にわたって死因の第1位となっていて、特に再発や転移に対する治療法の確立は難しく大きな課題となっています。