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日露共同会見のポイントは?専門家解説

2016年12月16日 20:26
日露共同会見のポイントは?専門家解説

 2日間にわたる日露首脳会談が終わり、16日午後、安倍首相とロシアのプーチン大統領による共同会見が行われた。今回の成果について、領土問題、ロシア外交に詳しい岩下明裕教授(九州大学・北海道大学)と、日本テレビ・伊佐治政治部長が解説する。


――共同会見のポイントは?

(伊佐治政治部長)
 両首脳の発言をまとめた。安倍首相は「平和条約がない異常な状態に私たちの手で終止符を打つ」と、自らの在任中にプーチン大統領とともに、なんとか領土問題を解決したいと述べた。ただ、どのような道筋で実現をするかという具体策については言及がなかった。

 一方、プーチン大統領は「平和条約締結には解決・確認すべき問題がたくさんある」と述べ、かなり領土問題への解決には遠い印象をもった。

 当初、歯舞群島と色丹島の“2島先行返還”などかなり劇的な進展も期待されたが、そういった結果には結びつかなかった。


――いろんな論点があると思うが、どこに注目したか?

(岩下教授)
 15日に山口で、安倍首相が記者団に向けて発言した中に3つのポイントがあった。1つ目は「元島民の故郷への自由訪問」、2つ目は「4島での日露両国による特別な制度での共同経済活動」、3つ目は「平和条約問題」。これを率直かつ、非常に突っ込んだ議論を行ったとあった。

 この「率直かつ、非常に突っ込んだ」という意味がわかりにくいと思うが、はっきり言うと、「全然話がまとまらず、ケンカをして別れた」みたいなイメージだろう。この時点で、今日(16日)出てくる結果というのはほとんど想像ができた。

 今回、平和条約問題はやる、だけど領土問題という言葉はひと言も入らなかった。また、元島民の故郷への自由訪問だが、これは元々そういう制度がある。それがなかなか使いにくいというのはあるが、元島民にとってみれば、今やっていることの延長にすぎない。

 そして、今回の売り物の「特別な制度での共同経済活動」。しかしこれは何をやるのかわからない。これをやったからといって、主権の問題に触れないようにとは言ってはいるが、じゃあそれが返還に結びつくかといえば、まったくわからない。

 経済活動して、盛り上がって「これはロシアのものですよ」といわれることもあり得るわけで、そういう中で、非常に問題がある。元島民の方の会見を見ると、言葉を非常に選んでいる印象があるが、内心、怒っているのではないか。領土問題が、また仕切り直しなのかというショックがあるのではと感じている。


――北方領土問題は、進展したとは言いづらいのか?

(伊佐治政治部長)
 ここは、今回、両首脳の間で一応、文書のかたちでまとまったものがあった。この合意の文書によると、安倍首相が唱えている「領土問題と経済協力」が、辛くも結びついた文面になった。その点は評価できる。

 安倍首相のシナリオは、「領土問題と経済協力」を車の両輪のように合わせて、「新しいアプローチ」として平和条約に向かっていく。ところが、プーチン大統領が、描くシナリオというのは、(1)経済協力(今日の会見では、ここに「安全保障面での協力」なども新たに加わった)→(2)信頼醸成→(3)領土問題へつながっていくという考え方だ。

 この両者の考え方が、なかなか埋まっていないというのが浮き彫りになっている。


――岩下教授は、どう見るか?

(岩下教授)
 「経済協力をやる」というのは、非常によい言葉だが、ロシアのやり方なので順調にいくとは限らない。ロシアの都合のいいように変えていく可能性もある。例えば、「ビザ無し渡航」に関して、ロシアはやるといいながら急に中止させたりもしている。口で約束して、本当にやるのかどうかというのは、非常に難しいと思う。

 そのような中で「共同経済活動」みたいなものがうまくできるのか、うまくいったとして、その後、返還につながるのかは、まったくわからないといえる。


――日本人にとって、最終的な目標というのは立場上「4島一括返還」ということだった。これについては実現可能なのか?

(岩下教授)
 もう択捉島と国後島は、最初から外されている。そして、「歯舞群島と色丹島をいくらで買うんですか?」という交渉になっているように思われる。だから、安倍首相は、どうしてもプーチン大統領に来てもらわなければならなかった。プーチン大統領が来ないで困るのは安倍首相だった。そういう状況の中で、条件が厳しくなっていったと思う。アプローチは新しいかもしれないが、問題があるのではないだろうか。


――柔道でいうと引き分けか、それ以下か?

(岩下教授)
 「一本とられた」と思う。ただ、日露関係全体で考えると、これはプラス。今後に期待したい。


――共同経済活動についてはどうか?

(野村修也教授 中央大学法科大学院)
 共同で経済活動をするといった場合、特別の制度とはいったい何なのかということになる。これがロシアの法律の下で行われるとすれば、それはやはり日本としては、実効支配を認めてしまうことになる。

 主権の問題抜きには、制度を作ることはできない。両国にとって、中立的な特区のようなものを作るといっても、これは相当専門的なすりあわせが必要になる。そう簡単ではないと感じる。

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