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忖度する人が栄転?「内閣人事局」を解説

2017年7月11日 19:51
忖度する人が栄転?「内閣人事局」を解説

 森友学園をめぐる土地取引の記録文書を廃棄したと答弁した佐川宣寿氏が、今月5日付で国税庁長官となった。民進党は、この人事異動について“なぜ昇進させたのか”と、国家公務員の幹部人事を首相官邸が決めていることを批判している。

 幹部人事を一元的に行う「内閣人事局」とはどのような組織なのか。日本テレビ政治部・柳沢高志記者が解説する。


――「内閣人事局」とはどのような組織なのか。

 内閣人事局は、第2次安倍政権が2014年に新たに設置した組織。首相官邸直轄で、約600人の国家公務員の幹部人事を決めている。つまり人事を官僚主導から政治主導に変えたということになる。

 例えば、国交省はもともと建設省や運輸省などが統合してできた役所だが、トップの事務次官は、旧建設省の事務官、技官、そして旧運輸省から1年ずつ順番に選ばれるという“慣行”が長く続いていた。


――つまり、官僚が自らの判断で身内の人事を決めていたと。

 そうなる。しかし、これでは官僚が国の利益よりも自分の省庁の利益を優先することが多くなるとして、安倍政権はこれを変えた。

 他にも安倍政権は、農水省の事務次官に次の次官と目されていた人物ではなく、あえて別の改革派と言われる官僚を次官に据えて、60年ぶりとなる農協改革を推し進めた。また、日本の海を守る海上保安庁の長官にキャリア官僚ではなく、現場をよく知る生え抜きの職員を起用するなど、前例のなかった人事を進めている。


――そうすると、前向きの改革のように聞こえるが、どうして野党は批判しているのか?

 いま、官僚人事を一手に握る菅官房長官は「官僚人事は政権が進める改革に賛成か反対かで決めている」と明言している。これに対し、あるキャリア官僚は「人事権を握られたことで、官僚が官邸の意向ばかりを気にするようになった」と話している。

 野党側は、こうした人事制度が官邸の意向を役所が過剰に忖度(そんたく)することにつながり、今回の“森友問題”や“加計問題”の原因の1つになったと指摘している。

 政府高官は「国民から選ばれた政治家が官僚の人事を握るのは当然だ」としている。しかし、行政のゆがみを生むような過剰な忖度を防ぐためには、人事が客観的に見て適切に行われたと納得できる説明が必要なことは言うまでもない。