石破首相、東南アジア相次ぎ訪問のワケ ベトナム共産党は「自民党」を研究?

■東南アジア重視のワケ、その1 トランプ関税
大型連休中にベトナムとフィリピンを訪問する石破首相。今年1月にはインドネシアとマレーシアを相次いで訪問するなど、就任以来、東南アジアの訪問は、これで5か国目となる。
石破首相がいま東南アジアを重視する理由の一つが、アメリカ・トランプ政権が打ち出した関税措置だ。アメリカはベトナムに46%、フィリピンに17%の「相互関税」を課すと発表している。トランプ政権は東南アジア各国について、中国が迂回(うかい)輸出する「抜け道」になっていると見て、高い関税を打ち出している。
特にベトナムは輸出依存度が高い貿易大国で、日本も加盟しているTPPのメンバー国でもある。
46%の相互関税が発動すれば、かなりの痛手で、トップバッターとしてトランプ政権との交渉に臨んでいる日本や石破首相からの情報共有にも期待を寄せている。
石破首相としては、トランプ関税によってアメリカ離れが進まないよう、東南アジアをつなぎとめるためにも重視しているというワケだ。
もう一つ、石破首相が東南アジアを重視する背景には中国の積極的な外交攻勢がある。
ベトナムには石破首相の訪問の直前に、中国の習近平国家主席が訪問。習主席はマレーシア、カンボジアも訪問し、トランプ関税への批判を強めることで、東南アジア各国の取り込みを図っている。
ある自民党幹部も「中国は相当したたかで、警戒しないといけない。日本を差し置いて、自分こそが自由貿易の守護神かのように振る舞っている」と話す。
これまでのように、中国の海洋進出に対応するための安全保障・防衛面だけでなく、経済面でも対中国を見据えた連携を強化しないといけない局面となっているのだ。
今回、2022年に当時の岸田首相に同行して以来、3年ぶりにベトナムを訪問したが、ベトナムの指導部で今もなお続投しているのはチン首相のみ。
最高指導者だったチョン書記長は去年、死去。国家主席は相次いで2人が辞任に追い込まれ、国会議長も交代するなど、共産党の集団指導体制の下でも激しい権力闘争が繰り広げられていることがうかがえる。
ある外務省幹部はベトナムの現状について、こう分析する。「ベトナムは今後10年内に民主化を模索する可能性が高い。今は一党独裁の共産党も民主化後を見据えて、長年、政権与党を続けている日本の自民党を研究している」
しかし、石破首相が総裁として率いる、その自民党は去年の衆議院総選挙で敗北。第一党として政権は維持したものの、少数与党へと転落した。
自民党もベトナム共産党のような、頻繁なトップ交代の時代に突入するのか。
6月の東京都議会議員選挙、そして夏の参議院選挙を控え、帰国後、石破首相を難しい終盤国会のかじ取りが待ち受けている。
(同行取材:日本テレビ自民党担当キャップ・前野全範)