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朝日新聞 「吉田調書」記事を取り消し謝罪

2014年9月12日 3:35
朝日新聞 「吉田調書」記事を取り消し謝罪

 福島第一原発事故に関する政府の事故調査委員会が当時の吉田昌郎所長に聴取した記録、いわゆる「吉田調書」が11日、公開された。この吉田調書について朝日新聞の木村伊量社長らが11日夜、会見し、当時の吉田所長の命令に違反し、所員の9割が撤退した、と報じた5月20日の記事を取り消し、謝罪した。

 朝日新聞社・木村社長「間違った記事だと判断いたしました。『命令違反で撤退』の表現を取り消すとともに、読者および東電のみなさまに深くおわび申し上げます」

 朝日新聞は今年5月20日付の朝刊で、「吉田調書を入手した」として「福島第一原発にいた所員の9割にあたる約650人が、吉田所長の待機命令に違反し第二原発に撤退した」などと報じていた。会見ではこうした報道に至った原因について、「記者の思い込みや記事のチェック不足」と説明した。

 具体的には、吉田調書とは別に入手したビデオ会議での吉田氏の発言メモに第一原発に待機するよう指示した記録があったこと、そして多くの所員が第二原発に移動したことから、「命令に違反した」と判断したという。ただ、取材の過程で吉田氏の命令を聞いたという所員が確認できなかったにもかかわらず、命令が伝達されていなかった可能性について検証しないまま記事を掲載したと明らかにした。

 また木村社長は、取締役編集担当役員の杉浦信之氏の解職と関係者の厳正な処罰を発表。自身については社内改革に道筋をつけた上で辞任することを示唆した。

 一方、慰安婦問題について朝日新聞は8月5日付の朝刊で、第2次大戦中に朝鮮で数百人の若い女性を強制連行した、などとした男性の証言は虚偽だと判断し、過去の一部の記事を取り消した。これについても木村社長は、「誤った記事を掲載し、訂正が遅きに失したことについて読者におわび申し上げる」と謝罪した。

 今後は、吉田調書と慰安婦問題のそれぞれの報道について経緯や、組織的な問題がなかったかどうかなど第三者委員会で検証するという。